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シカゴ新報──戦後の在米日系人の足跡をたどる

アメリカ中西部に転住した日本人移民・
日系人に関する基礎資料
日本移民学会会長 吉田 亮

1970年代より本格化する北米地域の日本人移民・日系人史研究では、第二次大戦前の太平洋沿岸地域への日本人の移民行程や移民社会の形成・展開について、80年代には戦時下の日本人・日系人強制収容に関する研究が蓄積されてきた。北米でも中西部や東部地域の研究は、西海岸と比較すると、限定的であるといわざるを得ない。特に、強制収容所から出て、中西部や東部に転住した日本人移民・日系人に関する研究については今後もっと注目される必要があろう。こうした研究に不可欠な情報資料を提供してくれるのが当該地域で出版された日系新聞である。今回出版となったマイクロフィルム版『シカゴ新報』(1945〜2003年)は、中西部の中心都市であるシカゴで、強制収容所から同地に転住した藤井寮一によって1945年11月15日に創刊され、同地の日本人・日系人社会の史的展開を映し出してきた邦字新聞である。シカゴへの日本人の移動はコロンビア博覧会前後にはじまり、1935年に日本人共済会の創立によって組織化されていったといわれている。20年代に400から500人位であった当地の日本人人口は、強制収容所からの転住者を迎えたことで1945年には一挙に2万人に増加した。こうした転住者への福利厚生事業への高まりを受けて、藤井寮一が報道機関のひとつとして、『シカゴ新報』(前身紙は『ニューズレター』)を創刊したのである。「創刊の辞」で藤井は、同紙の3つの「任務」として「転住の促進と、国際関係に就ての正確な理解を普及せしめること、日本人民の救済運動に貢献すること」と記している。創刊号には湯浅八郎「日本更生の諸問題」、藤井寮一「幣原内閣の性格」、「東京通信」、「日系市民協会シカゴ後援会の活動」、「シカゴ人物往来(一)梅崎八太郎」、マックス・ウェルナー「欧州平和のかぎ」、「転住相談部」他というように、3つの「任務」を踏まえた記事が並んでいる。
 『シカゴ新報』を通じて得られる情報は、日本人・日系人の転住とそれを支援する活動に限らない。同地の日系社会を構成する諸団体、中でも県人会、日米評議会、日系市民協会、宗教・文化・芸術団体による諸活動、さらに個人史に関する情報は、日系社会の史的変遷を研究するために、文芸記事は日系文学史の資料として、さらにシカゴに滞在した知識人(鈴木大拙、家長豊吉、大山郁夫、永井荷風他)に関する情報は日米交流史の情報を提供してくれるものである。

(同志社大学 社会学部教授)

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