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戦前・戦後の結節点における企業の一大記録

文京学院大学教授 由井 常彦

 此の度、雄松堂アーカイブズ株式会社においてマイクロフィルム版で刊行の「証券処理調整協議会資料・企業別資料」は、戦前から戦中と戦後再建の結節時点における日本企業の一大記録であり、重要な企業データーである。
第二次世界大戦それ自体は、昭和20年8月15日で終戦となったが、この時点で企業活動が終結したわけではなく、大多数の企業は、焼跡にあっても、戦時中の事業活動の整理の必要からも、また国民全体が生きてゆく上にも、さし当っての企業の経営活動自体は従来の延長のうえに継続され、昭和22年になって革命的な戦後改革が発足するに当って、経営全般の見直しが、新旧の勘定の分離をともないつつ翌年にかけて行われた。
 ところで、この戦後改革実行の際、事実上事務局的な調査機関として設置されたのが証券処理調整協議会であった。同協議会は、改革のための徹底した調査活動として、個別企業の調査と経営のデーターを収集しており、それは株式処分の必要の有無と必ずしもかかわりなく、空前ともいえる大がかりなものであった。調査結果については、個々の企業の経理担当者を除くと、再建が切実の当時の企業ないし経営者にとって大した関心ではなく、また学界ないし研究者にとっても、混乱期の記録としてしばしば見逃され、長い間忘却されていたといえる。
 しかし考えてみれば、明治大正以来の企業の経営史において、この時点こそ戦前以来の発展の終着点であり、かつ戦後再建から成長のスタートといってよい。また、このデーターには会社によって若干の不備も見受けられるが、概して経営分析の諸事項から、会社の概要や事業活動が満遍なく採録されており、多くはこの時点での営業報告書があげられている。戦時中に設立され、まもなく整理された関係企業の記録のような貴重な資料もしばしば収録されている。最近の学界においては、三十年体制、四十年体制として、戦前・戦中そして戦後の企業活動の連続面を再認識、評価する傾向が注目されている。そうした問題関心においても、今回のマイクロフィルム版による刊行が有意義な試みであることは明らかである。


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