日本の大企業の株式所有構造は戦前と戦後とで大きく変わった。戦前のそれにはいくつかの類型があったが、いずれも資産家個人の所有という性格が強かった。このことは株式配当の強い要求などコーポレート・ガバナンスのあり方にも影響し、ひいては企業の行動やさらには経済システム全体の性格をも特徴づけた。ひとことでいえば「個人資本主義」的性格が強かったといえよう。これは戦時期に変化を蒙ったが、戦後になると「法人資本主義」といわれるように大幅に性格を変えた。以上は比較的よく知られているであろう。
この変貌をもたらした大きな要因は、財閥解体等による株式所有者の交代であった。この際の株式等の売出を担当したのが証券処理調整協議会(SCLC)である。その活動については、協議会自身の総括記録で本文・付録各40頁程からなる『S.C.L.C.業績誌(四ヶ年の業績回顧)』(1951年・同協議会)があり、基本資料として用いられてきた。しかしあくまで総括資料であって、協議会の方針に関する基本資料、証券処理の集計情報が得られるにとどまる。それに対して今回マイクロ化される資料の内容を見ると、毎回の協議会の議録や企業別の情報が利用可能になる。これにより、「証券民主化」のために所有の集中復活を排除し分散化を図ろうとする一方、値崩れ防止をも考慮しなければならなかった協議会の方針、また各企業別の所有構造の再編などが一挙に把握できるようになると思われる。ここから新たな研究が生まれてくることを期待する。