☆会場からのご質問

今回の講演で、是非チャーチル氏のほうからみなさんと交流をしてみたいという、ご希望がありましたため、会場の皆様から挙手にて質問していただきました。

質問
私はイギリスにしばらく住んだことがありますが、子供ながらに英国人が毎朝祈りをすることや、文学を初めとして、キリスト教的なものがあらゆる場面で登場することを不思議に思っていました。また、神を信じない人間は、善悪の違いが分からない、との友人の言葉に大変ショックを受けました。サー・ウィンストン・チャーチル氏も演説の中で「神」と言う言葉を使っていますし、アメリカの大統領も危機的な状況の中で「神」という言葉をよく口にします。そういうことを踏まえて、日本における宗教の曖昧さ、特に戦後、一種タブー視されてきたような部分を比べた時、現代英国人にとって宗教というものがどのような意味をもっているのか教えて下さい。

チャーチル氏
チャーチル氏ず、言えることは100年前、200年前に比べ現代英国人にとって宗教というものは重要性が低くなっているということです。困ったときの神頼みではないけれど、危機的状況において英国人をはじめ西洋人は、上を見上げて神が助けてくれるのではないかと期待するのは事実です。したがって、祖父も演説の途中で「神が与えたもう全ての力を」という言い方をしていたことも、そうした一部であったのではないでしょうか。

祖父自身そんなに信心深いとか、宗教的な人物ではなかったようですが、ただキリスト教文明全体と、そしてそれを代表すると考えていた西洋の文明については、大変な誇りを持っていました。ただし、キリスト教文明という言い方をしましたが、ここ最近ではこういったものも曖昧になってきているようです。それにはTVの影響もあるでしょうし、移民の影響もあると思います。現在、英国の国内には200万人のイスラム教徒の英国人が住んでおり、アメリカでは600万人います。このことは宗教を考える上で無視できません。例えば10年前の湾岸戦争の時にも、ロンドンのアメリカ大使館の周囲に、多くのイスラム教徒が集会を開き、フセインの勝利を祈っていました。このことを取ってみても、異教徒が英国に与える影響は大きいものと察していただけると思います。日本はそのような問題を輸入しなかったことは賢明であると思っています。


質問
「ナチスドイツに宣戦布告したのは我々の側であって、相手側ではない」とチャーチルの言葉がありますが、これはドイツが英国に対して宣戦布告していないと言うことでしょうか。

チャーチル氏
まさにそのとおりです。1939年英国がドイツに宣戦布告しています。当時の首相、ネヴィル・チェンバレンは初めヒットラーに対し柔軟な対応を取っていました。しかし度重なるヒットラーの侵攻を目の当たりにして、とうとうドイツがポーランド侵攻した時、48時間以内に撤退をしないと戦争状態になると宣言しました。しかし、ドイツ側がその要求を無視したため、戦争状態に入りました。我々英国人はヒットラーの侵攻の目的が何か予測できたため、ヒットラー医師が飲ませようとした薬をむざむざ飲む気はなかったのです。


質問
過去に国民、国家の統合、植民地のあり方について日英は共通の問題点や苦い経験を持っています。これに対してどのように考えているのか、またこれを踏まえて英国でしたらアイルランド、日本でしたらアイヌ民族や、エスニック・マイノリティーなど、世界的な規模の中の弱者に対し、現時点ではこれからどのような態度で臨んで行かなくてはならないのか、その見識をお聞かせ下さい。

チャーチル氏
英国の植民地に行ってきた政策について、悪いように言われることも多くあり、実際、彼らのもつ資源や、そういったものを英国が利用してきた事も確かです。しかしその反面、同時に英国がもたらした教育、文明、政治機構は現在も続いており、それは彼らにも計り知れない恩恵を与えているはずと考えています。昔、英国の植民地だった国々は今でも、英国との結びつきを大切にしているのです。例えば、英国植民地であった、北アフリカ、シエラレオネにおいては、現在独立国となりましたが、英国の植民地時代を懐かしんで、英国がいた頃には秩序があり、文明があったという人もいます。事実、英国が離れてしまってから、十代の子供が機関銃をもって暴れるような事件も起こっていますし、実際に3年前には英国軍隊も呼ばれています。また、香港では中国本土に返されることを嘆く香港人が多くいたことを忘れないで欲しいと思います。
この例から分かるように、私はイギリスの植民地時代とその政策について、むしろこれは英国文明を世界にもたらした、良き時代だったと考えることもできると思います。

川勝氏
英国は世界の陸地、人口の4分の1、そして7つの海を支配するという大帝国を過去に築き上げました。それがコモンウェルス、英連邦と形を現在変えています。ここでわたしが大変不思議に思うことはこの英連邦がみな仲がいいということです。かつて植民地で支配された人々が、エリザベス2世に親近感をもって、この英連邦のスポーツゲームなどをしている。それに対して日本はといえば、英国を手本に植民地支配をしようとして、結局恨まれてしまっている。その違いはどこから来るのでしょうか。先ほどCivilizationという言葉が出ました。これは 1. Christian Ethic 2. Scientific Spirit 3. Law and Order の3つの要素から構成されます。つまりこれを乱すものは非文明とみなし、これを守るために戦うという観点に立って植民地支配をしてきたのです。英国中心と周りにはそう見えたかも知れませんが、英国は主観的な立場からそうは考えていませんでした。
現在我々はチャーチル・アーカイブや、1800年から1945年までの英国の全ての公式文書を収めた英国議会文書などによって、こうした歴史的事実を二次的文献だけではなく一次資料から英国人と同じように閲覧できる段階になりました。テキストブックを訳している時代から、彼らが元にしている記録を手にできる時代になったのです。このような資料を媒介として我々は古代のローマ帝国に匹敵すると言われる近代の大英帝国から多くのものを学ぶに違いないと思います。


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