| Net Pinus 60号 |
―古書への扉―
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2005/06/20
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| −ペリー提督と共にやってきた画家− |
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ハイネ
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「世界周航日本への旅」
「日本遠征のグラフィック・シーン」 |
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今回ご紹介するウィリアム・ハイネ(William Heine, 1827-1885)は、かの有名なペリー提督(Matthew Calbraith Perry, 1794-1858)の黒船に乗り日本へやってきた画家です。改めて述べるまでもなく、ペリー提督は日本を開港させるためにアメリカからやってきて、日本と和親条約を結び、永い間続いた鎖国を解いた人物です。
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ペリー日本上陸[写真1]
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日本との交渉[写真2]
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ペリー提督日本遠征記より
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ハイネは、ペリー提督の日本上陸(写真1)、アメリカと日本の対峙、交渉(写真2)などの歴史的に重要な場面から、日本の風景、建物、人々にいたるまで、多くのスケッチを残し、それらのスケッチは後に「ペリー提督日本遠征記」(Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China Seas and Japan, performed in the years 1852, 1853, and 1854...)の中に収録され、開国についての歴史的考察を行う時、現代においても欠かすことのできない資料として認められています。
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「世界周航日本への旅」
タイトルページ[写真3]
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ハイネ自身の著作 「世界周航日本への旅」(邦訳:新異国叢書 第II輯 中井昌夫訳 雄松堂出版)は、「日本に関しての記述に誤りが目立つ」という理由で歴史的記録としての評価はあまり高くはありません。しかし、「世界周航日本への旅」の訳者、中村昌夫は序文でこう述べています。
「本書の価値は、26歳の青年ハイネが、好奇心に満ち進取の気性に富んだ日本人と親しく交わり、また東洋の島国の美しい自然に接したときの感激を、率直かつ感受性ゆたかに語っている部分にある。[中略]彼はあくまでも旅行ライター、スケッチ画家として、ヨーロッパ人にとってまさに異質の文化を有する日本人との情味あふれる交友を記録したのであり、われわれがそうした視点に立つとき、本書は生彩を放ってくるのである。」
このことを示すエピソードとして「世界周航日本への旅」の中には、下記のような話があります。
沖縄で夜明け前に、ハイネは同僚と一緒にしぎ鴫撃ちに出かけることになりました。
「二人は町を一周し、日の出後間もなくして、反対側にあるいくらかの高地の、おそらく裕福な人々だけが住んでいる地区に入った。通りはまだまったくひとけ人気がなかった。だが、屋敷や庭や家の戸は開いたままになっていた。どうやら泥棒は、幸福なこの地方の人間社会では未知の階級であるように思えた。われわれは好奇心を抑えることができず、今まで閉鎖されていたこの世界に忍び込んだのである。
[中略](家の)中に入ると、まず一つまたは二、三室の玄関のま間があり、その奥に居間があった。部屋と部屋とを分ける間仕切は木製の引き戸で、これは好みに応じて取りつけたり取りはらったりすることができる。[中略]
人の姿はなく、声も聞こえなかったので、探検をさらに進めることにし、[中略]われわれは静かに家の反対側に進み、そっと簾の間から中をのぞきこんだ。床をおおっている畳の上には、三人の婦人と二人の小さな子が横になっており、軽い夜着(ゆかた裕衣)
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日本の浴場[写真4]
「世界周航日本への旅」より
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を着て深く眠り込んでいた。[中略]許されぬ好奇心から生じた唯一の結果があるとすれば、それはこの眠れる美しい女性に対する大きな驚きであり、またそれがわれわれの心を悩ませたことであろう。しかし好奇心は満たされたので、われわれは侵入したときと同じように静かに立ち去った。そして今日まで、あつかましい外人二人が、この良き島の住民の聖所にあえて侵入したなどと邪推するものは恐らくいないであろう。」(ハイネ「世界周航日本への旅」新異国叢書 第II輯 中井昌夫訳 雄松堂出版)
もし、この家の住民に気付かれでもしたならば大騒ぎになっていたことでしょう。本来ならば罪に問われてもおかしくないような行いではありますが、旺盛な好奇心がちょっと行き過ぎた行動となって表れてしまったのでしょう。それまで見ることのなかった日本人の日常生活に興味引かれて、思わず家の中を覗いてしまった若い二人の心臓の鼓動が、こちらまで伝わってくるようです。
ハイネはさらに、早朝の光の中で雪を頂いた富士山を見たときの感動、日本の浴場(写真4)を見た時の驚き、下田の奉行と友好的な関係を築き、別れの際にはお互いに詩を送り合ったことなど、様々な心証、出来事を素直な感性で綴っています。
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タイトルページ[写真5]
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ペリー肖像[写真6]
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「日本遠征のグラフィックシーン」より
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■ 「日本遠征のグラフィック・シーン」
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(写真5) |
さて、ハイネによる日本に関した出版物の中には、ペリー提督遠征の時に描いた多くの絵の中から選んだ9枚とペリーの肖像画1枚(写真6)を含む計10枚を収録した大判の「日本遠征のグラフィック・シーン」というものがあります。この中の絵は、「ペリー提督日本遠征記」とハイネ著「世界周航日本への旅」に掲載されているものと、同じ場面のものがほとんどです。(人物の配置などに違いがあります。)
マカオ、広東、沖縄、下田などの風景が、人物を点景に配しながら描かれているこの画集は、ただそれとなく眺めるだけでもハイネの画家としての技量が推し量られるのですが、思わずハッとするのは「ペリー提督日本遠征記」や「世界周航日本への旅」の同じ場面の絵と並べて見たときではないでしょうか。同じ場面でありながら、両者の違いは一目瞭然。絵の大小や彩色の有無などが違いを生み出しているのはもちろんのことですが、「日本遠征のグラフィック・シーン」ではハイネの伸びやかな筆致が発揮され、ハイネが本当に描き出したかったものがなんであったか、ということが伝わってくるようです。(写真7-10)
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「日本遠征のグラフィックシーン」より
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「ペリー提督日本遠征記」より
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「世界周航日本への旅」より
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広 東[写真7]
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「日本遠征のグラフィックシーン」より
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「ペリー提督日本遠征記」より
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琉 球[写真8]
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「日本遠征のグラフィックシーン」より
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「ペリー提督日本遠征記」より
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横 浜[写真9]
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「日本遠征のグラフィックシーン」より
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「ペリー提督日本遠征記」より
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下 田[写真10]
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ペリー提督の公式記録に載った貴重な歴史資料としての多くの絵、「世界周航日本への旅」で綴られているハイネの体験した日本、そして「日本遠征のグラフィック・シーン」の中で描かれている人々と風景、これら全てをひっくるめて見たとき、鎖国から開国へと転じてゆく日本の一大事と、その歴史の流れの中で確かに存在していた日本人と外国人との交流、そして日本の美しい情景を、ウィリアム・ハイネという1人の画家の目を通して私たちは確かめることができるのです。
【参考文献】
新異国叢書 全35巻
第 I 輯 第8巻ペリー日本遠征随行記
第II 輯 第1巻ペリー日本遠征日記/第2巻ハイネ世界周航日本への旅
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ハイネ「世界周航日本への旅:ペリー提督日本遠征随行記」全2巻 初版 (小社在庫)
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Heine, Wilhelm
Reise um die Erde nach Japan an Bord der Expeditions- Escarde unter Commodore M. C. Perry in den Jahren 1853, 1854 und 1855. Leipzig: Otto Purf rst, 1856.
8vo. 2 vols. First edition. 16, 324; [8], 376 pp. 10 lightly tinted plates, including one of the communal bath at Shimoda. Contemporary half cloth over marbled boards, paper labels on spines, minor staining to lower corner of vol. 2 (v.2 label defective), foxing throughout.
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ハイネ「世界周航日本への旅:ペリー提督日本遠征随行記」全2巻1冊 フランス語訳初版 (小社在庫)
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Heine, Wilhelm
Voyage autour du monde, le Japon: expedition du commodore Perry, pendant les annees 1853, 1854 et 1855, faite d'apres les ordres du gouvernement des Etats-Unis / traduit de l'allemand de Wilhelm Heine par A. Rolland. Bruxelles: H. dumont, 1859-1860.
8vo. First edition in French. 304; 315, 10 plates. Quarter buckram with marbled boards, corners rubbed.
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ハイネ「日本遠征のグラフィック・シーン」初版 1856年 ニューヨーク (小社在庫)
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Heine, William
Graphic Scenes in the Japan Expedition, by William Heine, Artist of the Expedition. Comprising Ten Plates, and an Illustrated Title-Page, Printed in Colors and Tints by Sarony & Co. New York: G.P. Putnam & Company, 1856.
Large folio. First edition. [12] leaves (including title, introduction, biographical sketch of Commodore Perry, and descriptive text). Tinted lithographed portrait of Commodore Perry, after a daguerreotype by P. Haas, on India paper mounted with a facsimile signature on mount, and two chromolithographed plates and seven tinted lithographed plates of India paper mounted depicting scenes encountered by Commodore Perry on his famous embassy to Japan. All leaves mounted on guards.
Modern half blue morocco, decoratively tooled in gilt, over marbled boards. Spine decoratively tooled and lettered in gilt in compartments. Original lithographed front wrapper laid in. Some marginal soiling. A few text leaves with marginal repairs.
List of Plates: 1. Portrait of Commodore M. C. Perry. 2. Macao from Penha Hill. 3. Pagoda of Whampoa. 4. Old China Street in Canton. 5. Kung-Twa, at On-Na, Lew Chew. 6. Mia, or Road-Side Chapel, at Yoku-Hama. 7. Temple at Ben-Teng, in the Harbor of Simoda. 8. Street and Bridge at Simoda. 9. Temple of Ha-Tshu-Man-Ya
Tschu-ro, at Simoda. 10. Grave-Yard at the Simoda, Dio Zenge.
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Heine, Wilhelm
Japan und seine Bewohner. Geschichtliche R ckblicke und Ethnographische Schilderungen von Land und Lenten. Leipzig: Otto Purf rst, [1860].
8vo. xx, 383 pp. Cloth spine and corners, paper boards. Lether label with gilt letters.
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