| Net Pinus 61号 |
古書への扉
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2005/09/20
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エディンバラの旅行案内書
−200年前のガイドブック−
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The Traveller's Companion through the City of Edinburgh and, Suburbs: Comprehending a Concise History of the City, from the Earliest accounts to the Present Period: with a Description of the Public Buildings, illustrated with Engravings. Edinburgh, A. Kincaid, 1794,
8vo. First edition of the first Edinburgh guide book. 2 leaves, 138 pp., 1 folding table, 13 engraved plates, 2 folding maps. Contemporary tree calf.
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[写真1]
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このコーナーでは、これまで3回に渡って「旅行記」「探検記」をご紹介してきました。どれもみな、挿絵がすばらしかったり、有名な探検家の冒険だったり、といった古書でした。今回はちょっと趣向を変えて、200年前の「ガイドブック」をご紹介したいと思います。
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表紙[写真2]
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旅に出ようと思った時に、多くの人が持っていくのがガイドブックではないでしょうか。ガイドブックには、その地の観光名所から、歴史、交通、宿など、その地を初めて訪れる人が必要とする基本的な情報が載っています。最近本屋に並んでいるガイドブックは、どれもカラーの写真付きで、季節の見どころや、おいしい食べ物、お土産、お薦めコースまで網羅されていて、ページを繰るだけでも心浮き立ってくるようなつくりになっています。
さて、私の目の前にあるのは、18世紀の終わりに出版されたエディンバラのガイドブックです。[写真1] タイトルには「The Traveller's Companion」とあります。[写真2]この本の中には18世紀末の旅行者にとってエディンバラを歩くのに必要な情報が詰まっているのです。200年前のガイドブックというのは、一体どのようなものだったのでしょうか。それでは中を見てみましょう。
タイトルページの横には、折込みでエディンバラ近郊の地図が入っていて、大きな通りの名前と教会や広場の場所が記されています。[写真3]現在も存在している通りの名前や建物が見受けられます。エディンバラは、中世時代の建物が残る旧市街(Old Town)[写真4]と、人口が増加したために18世紀から造られた新市街(New Town)[写真5]とに分かれています。現在の地図と比べると、今の街とさほど変わらないことがわかります。
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エディンバラ近郊の地図[写真3] <拡大>
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本文の最初項目は歴史です。この項目は、ページ数にして50ページ以上に及んでいます。現代ならガイドブックとしてではなく、歴史の教科書としても使えそうです。歴史の項目が終わると、次にはたくさんの教会や、銀行、大学について、それぞれ設立の歴史などが述べられています。現代のガイドブックは、写真やカラーの挿絵でページを賑やかにしていますが、このガイドブックでは15枚の銅版画が建物の外観や当時の風景を表しています。[写真6,7]
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銅版画の1枚[写真6]
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銅版画の1枚[写真7]
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歴代のスコットランド王の居城であったエディンバラ城(Edinburgh Castle)[写真8, 9]や、アーサー王の玉座(Arthur's Seat)と呼ばれる岩山[写真10, 11]など、現在でも観光名所とされている場所もあります。
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ガイドブック[左]と現在[右]のエディンバラ城(Edinburgh Castle)[写真8, 9]
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ガイドブック[左]と現在[右]アーサー王の玉座(Arthur's Seat)と呼ばれる岩山[写真10, 11]
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| 椅子駕籠や荷物運搬人(ポーター)の料金表[写真12] |
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| 荷物運搬人(ポーター)の料金表[写真13] |
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最後の方には、ホテルとコーヒーハウスの一覧が出てきます。場所の案内と、仕事で来た人が泊まりやすい宿などの情報が簡潔に載っています。興味を引くのは、椅子駕籠や荷物運搬人(ポーター)の料金表です。表によると、駕籠の値段は昼と夜によって、そしてどのくらい乗るかによって料金が異なっていました。[写真12]ポーターも何階まで荷物を運ばせるか、何を運ばせるかによって値段が違います。[写真13]また、郵便局についての詳細な情報も載っています。エディンバラからスコットランドのほかの町に郵便が毎週何曜日に出て、いつ向こうに着くのか(たとえば、グラスゴーだと毎日夜の8時に出て、翌朝には着いています。)ということなどがわかります。このような料金表や通信網の情報は、当時の人々にとってとても重要だったのでしょう。
こうして見ていくと、この本には現代のガイドブックのような派手さはありませんが、ちゃんと「ガイドブック」としての役割を果たしていたことがわかります。ともすれば、現代のガイドブックには「消耗品」としての一面があるように思われます。確かに、古い情報しか載っていないガイドブックは役には立ちません。やはり、その土地の歴史と最新の情報が載っているからこそ、今からその地へ向かう人々の「旅のお供」としての役割を果たせるのです。そういう意味からすれば、200年前のガイドブックを現代の旅に持っていくのは、(なかなか贅沢なことではありますが)実際の旅先での活用という面からすれば、心もとないでしょう。しかし、ガイドブックとしての役割が果たせなくなったとしても「200年前のエディンバラの空気が詰まっている本」という目で見ると、この本は新たな役割を担っているのだと思われ、革装丁で一見地味な古書であるこの本が、とても深く大きなもののように感じられるのです。
「エディンバラの市内と郊外の旅行案内」初版 (小社在庫)
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The Traveller's Companion through the City of Edinburgh and, Suburbs: Comprehending a Concise History of the City, from the Earliest accounts to the Present Period: with a Description of the Public Buildings, illustrated with Engravings. Edinburgh, A. Kincaid, 1794,
8vo. First edition of the first Edinburgh guide book. 2 leaves, 138 pp., 1 folding table, 13 engraved plates, 2 folding maps. Contemporary tree calf.
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