| Net Pinus 61号 |

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2005/09/20
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紹介絵本:「うさぎとかめ」(1966)
“The Hare and the Tortoise”
Illustrated by Brian Wildsmith
Based on a Fable by La Fontaine
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タイトルページ
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すでに 、街には秋の気配が漂いだしている。スポーツや旅行、食事、音楽と五感を刺激するにはもってこいの季節でもあるだろう。だがあえて静かに絵本を開いてみてはどうだろうか。よく匂いや味、音楽などで昔の記憶が蘇ったりすることがあるというが、色彩でもそれは起こる。絵本の中に出てきた色を味わうことで、あなたの子ども時代の記憶が蘇るかもしれない。今回紹介するブライアン・ワイルドスミスの絵本は、まさに「色の記憶」を蘇らせてくれる本といえるだろう。
「うさぎとかめ」は誰もが知っている有名な話である。ラ・フォンテーヌ(La Fontaine, 1621-1695)の寓話をもとにしてワイルドスミスが絵をつけている。しかしこの絵本にはうさぎとかめ以外の多くの動物たちが登場し、見る人の目を可愛らしい動物と鮮やかな色彩で楽しませてくれる。この絵本を読む子どもたちは、うさぎとかめのレースに集まった鹿、フクロウ、たぬきなどの動物たち一匹一匹がいかに魅力的な存在であるかを知るだろう。物語に関係のない動物たちを探すためだけに絵本を再び開こうとする子もいるかもしれない。子どもは隠れているものを探すのが好きである。そんな子どもの習性を巧みに取り入れたワイルドスミスの絵本は、様々なところに動物が隠れていて読者を飽きさせない。子どもとしっかり向き合った人だけが作れる、まさに子どものための絵本だ。
絵本は言うまでもなく絵が主役である。昔から使い古されてきた物語でも、新しい絵によって今までにない世界が作り出されるからだ。彼の描く「うさぎとかめ」の世界も、新しく生まれ変わった彼独自の世界を描いている。日本人が想像しがちな「緑一色の山に白いうさぎとかめ」ではなく、大胆な構図を使った風景にあらゆる色彩と生き物が散りばめられた「うさぎとかめ」だ。色彩が豊かということは、描かれる絵の細部のそれぞれが独自に輝いているということだろう。そしてそこには彼の絵本全てに共通する「現実世界との対比」が表現されている。
「現実世界との対比」とはなんだろうか。それこそまさに彼の描く世界観そのものだ。ワイルドスミスは今ある世界の現状は大人の責任であると語っている。そして彼にできることは現実とは違った世界を作り出して、子どもたちに見てもらうことなのだ。彼は炭鉱夫の息子として生まれ、灰色に塗り込められたヨークシャーの産業社会で子ども時代を過ごした。彼の子ども時代の色といえば灰色の炭鉱であった。だからこそ現実とは異なった色彩豊かな世界を描く想像力に恵まれたのだろう。
そのような子ども時代を送った彼にとって、自分と同じ境遇であった子どもたちに現実とは違う世界を見せたいという気持ちが強かったはずだ。ワイルドスミスは次のように言っている。「私はこれまでの生涯を子どもたちのための絵本を生み出すことに捧げてきました。私は絵本にこの「愛」を反映させ、子どもたちが生まれてきたこの素晴らしい世界をよく見、理解し、感謝する助けになればと願っております」。
ブライアン・ワイルドスミスは彼が間違いなく現代絵本画家を代表する一人であり、また彼の作る絵本には子どもの描く絵に共通する力が秘められている。2005年で75歳になった彼は今もなお子どものためにフランスのカンヌの太陽の下で絵本の世界をつくりつづけているのである。
本HPで紹介した書籍は雄松堂古書部が在庫しています。
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「うさぎとかめ」The Hare and the Tortoise. London: Oxford University Press, 1966.
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「へびくんはらぺこ」Python's Party. London: Oxford University Press, 1974.
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「いぬとかりゅうど」Hunter and his Dog. London: Oxford University Press, 1979.
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