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新古書への扉-古書の愉しみは十人十色-
専門知識がないと・・・そんなイメージを古書に持っていませんか?
実は古書の愉しみ方は100人100通りなのです。もっと気楽に、自由に古書を眺めてみましょう!
文字を読んで先人の知識を探求するのはもちろんですが、本はそれだけではありません。精巧な皮装幀から職人のこだわりに感銘をうけたり、写本のタイポグラフィーに斬新さを発見したり、一枚の美しい挿絵をぼんやりとながめてみたり・・・。ちょっと手ののばしにくい古書の世界に通じる扉・・・どの扉から入っても結構です。是非一度、古書の奥深さを覗いてみませんか? |

■マイヤー「新しい発見について」 − 1枚の図版から −
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マイヤー「新しい発見について」全2巻
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Meyer, Cornelio
Nuovi Ritrovamenti Divisi in Due Parti . . . . Roma: Gio, Giacomo Komarek..., 1696, 1689 (1698). |
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\630,000 (税込み)
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| Folio. 2 vols. (44) pp. with 16 half-page (incl. title engraving), 2 full-page, one double half-page, and one double-page engravings; (24) pp. with 13 half-page, one double half-page, and one double-page engravings. Rebound in calf vellum in the style of the period. |
この本は移動書架の左から2列目、上から3段目に静かに横たわっていました。ふと気になって開いてみると、現われたのはなんとも言えない迫力を醸し出している三人の男性でした。[写真1] 三人ともそれぞれ異なるタイプの眼鏡をかけ、まじまじとこちらを見ています。あまりに真面目な顔をしているので、見ているうちにこちらがじっとみられているような気がしてくるほどです。この眼鏡三人衆、何か気になります。これは一体どういう本なのでしょうか。
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[写真1]
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本書の著者、コルネリオ・マイヤー (1640-1700)はイタリアの発明家です。本書はマイヤーの晩年に出された本で、マイヤーの発明、アイデアなどが雑録的にまとめられている2巻本です。
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[写真2]
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第1巻目 [写真2] を見れば、マイヤーが水力技術者として活躍していたことがわかります。壊れた堤防の修復 [写真3] や、水源から浄化した水を運ぶ方法 [写真4] など、多くの図版が入っています。中には磁石 [写真5] や楽器の共鳴 [写真6] についての論文なども入っています。
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[写真3]
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[写真4]
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[写真5]
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[写真6]
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眼鏡三人衆が出てくるのは第2巻目の最初のページです。当然のことながら、眼鏡(OCCHIALI)についての論文のようです。眼鏡は13世紀の終わり頃にイタリアで発祥したということですが、初期の眼鏡はまだ耳にかける形ではなく、鼻にのせるか、手で持つ方法で使われていたとか。確かに、彼等は鼻に眼鏡をのせているだけです。[写真1]見れば見るほど気になる彼等の真剣な眼差し。彼等の表情から伝わってくる真剣さは、ただ事ではない気がしてきます。
ところで、第2巻目でもマイヤーの様々な発明、アイデアを見ることができます。中でもユニークなのが、生活に必要な機能の全てを、4つの壁から成る一つの部屋に収めた住宅のデザインかと思います。
一つ目の壁 [写真7] は、壁の高いところまで本棚になっている書斎です。ドアの向こうには、庭の木々と噴水が見えます。右端のちょっと気になる穴 [写真8] は、外に出なくても近隣の人と話ができるパイプになっています。17世紀のインターフォンといったところでしょうか。
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[写真7]
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[写真8]
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二つ目の壁 [写真9] は、扉の向こうに寝室が見えます。先ほどと同じく壁は高い所まで洋服などの収納棚となっています。部屋の左端には、暗箱があります。
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[写真9]
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三つ目の壁は実験室です。[写真10] 様々な実験道具が置かれています。
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[写真10]
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最後の壁は、中央が暖炉となっていて、その左には小さな台所があります。[写真11] 棚の収納には食器が入っています。ふと視線を落とすと、鳥を仕留めた猫と、獲物を横取りしようと企む犬の姿が目にはいってきました。[写真12] これは実際にマイヤーが部屋の中で目にした光景なのかもしれません。
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[写真11]
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[写真12]
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さて、ページをめくり、マイヤーの発明、アイデアの数々を見終えた後、再び眼鏡をかけた三人の男性を見てみました。[写真1]見れば見る程、リアルなお顔。そう、リアル!この絵が他の図版と一味違って見えるのは、三人の顔が妙に写実的だからに違いありません。なぜ、こんなにまでもリアルなのか。それは、マイヤーが眼鏡をかけた三人衆を実際に見ながら、この絵を描いたからではないでしょうか。三人の眼鏡をかけた真顔を、こちらも真面目な面持ちで描いていくマイヤー。そう考えると、この眼鏡三人衆の図版の根底には、人と人との濃密な時間が感じられます。
書かれている内容の詳しいことはわからずとも、何か心に訴えてくるものがあれば、一枚の図版からでも色々なことが想像できます。真偽のほどはさておいて、ああかもしれない、こうだったのかもしれない、と自由に思いを馳せるのも、古書の一つの味わい方かもしれません。
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