| Net Pinus 64号 |
小さな挿絵の展覧会
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2006/06/26
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◆児童書と童歌の出会い
「農家の青年」の一節をまず読んでいただきたい。
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When I was a farmer, a Farmer's Boy,
I used to keep my master's Hens,
With a CHUCK-CHUCK here, and a CHUCK-CHUCK there,
And here a CHUCK, and there a CHUCK,
And everywhere a CHUCK;
With a BAA-BAA here, and a BAA-BAA there
And here a BAA, and there a BAA,
And everywhere a BAA;
With a GEE-wo here, and a GEE-wo there,
& c., &c., &c.
Says I, My pretty lass, will you come to the banks of the Aire oh? |
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「CHUCK-CHUCK」「BAA-BAA」「GEE-wo」・・・童歌につかわれる、繰り返しの韻の響き、擬音語の楽しさは子供の心をとらえてはなさない。「農家の青年」はこの様なフレーズが少しずつ形を変え繰り返し登場する絵本である。母と、兄弟と、友人と、そして一人で・・・子供達は何度も絵本を眺めながら何回も同じフレーズを口ずさんだことであろう。
幼児が感じ取り、身につけていくものは意味よりもまず響きであり、調べてある。ゆりかごから慣れ親しんできた童歌を、ハイハイ、よちよち歩きと年齢を重ね、身の回りの行動範囲を広げるにしたがい、子供達は自らの生活の中で童歌の内容を体験し、収得していく。もちろんその追体験は実生活でのみで行われる訳ではない。それは時によって言葉による会話、絵や写真などの映像、文字を使った読み物などといった媒体を通しても行われる。こうした追体験の場を絵本の世界にとりいれたイギリスの先駆的な絵本作家の一人にコルデコットの名があげられる。コルデコットの絵本は子供達が幼い頃、母の胸で親しんできた音だけの童歌の世界から、動物に、田園風景に、人々へと子供達の世界を拡げていった。
1878年「The House that Jack Built」と「The Diverting History of John Gilpin」の2冊がクリスマスに出版される。ちょうどその時期はクレーンの「幼子のオペラ」、グリーナウェイの「窓の下で」が出版されるなど、児童書が新しい境地を切り開いているところであった。しかし新聞や雑誌の挿絵を描く風俗画家としてはじまったコルデコットの筆致の闊達さは他の絵本とは一線を画している。
少しコルデコットの絵本を見てみよう。
コルデコットの絵本はおおよそ20数頁から30頁程で、その中にカラーの挿絵が6枚から8枚挿入されている。大きさはタイトルによって多少の差はあるが、20数センチ四方で子供でも簡単に読み、持ち運べる。表紙は厚手のボール紙、本文の用紙はアイボリーがかった優しい色合いの丈夫な紙で、セピア色で印刷されたペン画がよく映える。描かれた人物や動物の動きは実に躍動感があって楽しい。人物の表情は少し大げさなくらい豊かでわかりやすく、子供達が喜んで眺めそうである。画像を見ておわかりかと思うが、一色刷りのペン画などはそれほど
丁寧に描き込んでいるわけではなく、むしろ荒いとさえいえる。しかし、風俗画を書いてきたこなれたペンタッチでその荒さがむしろ動物や人々の動きをつけている。背景はさっぱりと入れられている頁が多いが、イギリスの田園風景の特徴をおさえ、その省略が逆に見る人々の想像をかき立てる。カラーの挿絵は細かい部分までとても丁寧に書き込まれており、比較的優しい色使いで、主張した色を使っていないが、逆にイギリスの田園風景の描写に関してはリアリティがあるのではないだろうか。
子供たちは8年間クリスマスごとに2冊ずつ出版されたコルデコットの絵本を、1シリングをにぎりしめて買いに走ったという。耳で親しんできた童歌の世界を今度は絵の世界で親しむ。コルデコットの楽しい絵本を子供達は喜んで受け入れたのである。
この様な童歌がもととなった絵本というものは日本では余り展開を見せなかった。浦島太郎、桃太郎・・・一般に私達が必ずと言っていいほど読んだ昔話の絵本は、歌になっているものも多いが、まずストーリーありきである。その一つの理由としてイギリス人にとっての童歌は、日本人のそれとは比較にならないものがあることがあげられるのではないだろうか
。童歌はイギリスにおいて、幼少の時から家で、外で、家族から、または友達同士で・・・生活の一部として存在する。そして当然のことながら自然な形で伝承され、人々の言語の中に生きているのである。もともと英国の童歌は昔話や、歴史的事実に端を発するもの、宗教的名残の濃いものが殆どで、子供のためのものではないと言われる。それらは大人達の口からついてでてきた節つきの物語、つまりイギリス庶民の生活に根付いている根元的なものから端を発しており、英国人の意識の底辺にあるものである。
つまりイギリス人の根元的な無意識を童歌は持ち、この童歌を幼少から聞かされることにより、イギリスの子供たちはその自我をイギリスの社会環境に適合させていくのである。
この様な環境にあり、童歌がイギリス絵本の先駆的な作家たちのテーマとなったことは全く不思議ではない。英国人の根元的なもの・・・それを英国の田園風景に、童歌にコルデコットは発見し、絵本を制作したに違いない。絵本の制作において、物語や童謡はコルデコット自身が選択し、必要に応じて付け加えたり、変更するなどしてより完成度の高い絵本をつくりあげた。
また、コルデコットは英国田園を愛し、よく旅にでかけた。英国の風土や人々を表現した挿絵を眺めているといかにそれらにコルデコットが愛情を抱いていたのかが窺える。訪問した場所の人々そして風景から英国人の精神的な土壌となっているものを探しだし、イラストに巧みに取り入れていったのである。
たとえそれが、何のことはない田園風景であっても、童歌を聞いてきたものにとっては何かとても大切なものを感じ取ることになるのではないだろうか。生まれてきた頃から聞いてきた母の優しい声と、これから学んでいく外界をそれとなく繋げて導いてくれるコルデコットの魔法。これこそ真に子供が求めていたものであり、その子供の記憶を忘れてしまっていても、どこかなつかしいような、そして甘く切ないような感傷をよびおこす絵本なのである。
コルデコットについて コルデコットの本を読む:「農家の青年」「おいで娘さんと若者達」
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ここでご紹介した書籍は雄松堂古書部が在庫しています。ご興味がございましたらお気軽にこちらまでお問い合せください。
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コルデコット「農家の若者」
Caldecott, Randolf
The Farmer's Boy. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 32 pp, with 8 full color page illustrations. Original wrappers, soiled.
\20,000.-
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コルデコット「おいで娘さんと若者たち」
Caldecott, Randolf
Come Lasses and Lads. R. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 24 pp, with 6 full color page illustrations. Pictorial wrappers, slightly faded, but clean copy.
\24,000.-
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コルデコット「女の誉れメアリー・ブレイズ夫人に捧げる唄」
Caldecott, Randolf
An Elegy on the Glory of her Sex Mrs. Mary Blaize. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 24 pp, with 6 full color page illustrations. Pictorial wrappers, slightly soiled.
\24,000.-
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コルデコット「キツネが牧師さんちの門をとびこえる」
Caldecott, Randolf
The Fox jumps over th Parson's Gate. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 24 pp, with 6 full color page illustrations. Pictorial wrappers, rubbed.
\15,000.-
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コルデコット画 ゴールドスミス
「6ペンスの唄をうたおう」
Caldecott, Randolf
Sing a Song for Sixpence. R. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 31 pp, with 8 full color page illustrations. Original wrappers, spotted.
\20,000.-
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コルデコット「狂った犬の死に捧げる唄」
Caldecott, Randolf (illust.), Dr. Goldsmith (text)
An Elegy of the Death of a Mad Dog. R. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 32 pp, with 8 full color page illustrations. Stiff paper wrappers.
\24,000.-
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コルデコット「お馬にのって」
Caldecott, Randolf
Ride A-Cock Horse to Banbury & Farmer Went Trotting upon his Greymare.R. R. Caldecott's Picture Books. London: George Routledge & Sons. (n. d.)
4to. 24 pp, with 6 full color page illustrations. Pictorial wrappers, slightly faded and shaken.
\20,000.-
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