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去る3月12〜14日、東京国際フォーラムにて、日本古書籍商協会(ABAJ)の主催による2008年国際稀覯本フェアが開かれました。今回は特に世界各国の国際古書籍商連盟(ILAB)加盟店が参加し、正に国際の名にふさわしい催事となりました。日本の書店も、海外の書店も自慢の一品を並べ、古書通ではなくても、とても楽しめるものでした。
古書展には行ってみたいけれど敷居が高そうで・・・という方にも是非一度、古書展の様子を知っていただくため、今回は雄松堂でアルバイトをして1ヶ月。古書に関してはほとんど素人であるH君に実際に古書展に行ってもらい、感想レポートを書いてもらいました。
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画像をクリックすると大き名画像が御覧になれます。
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会場入口
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東京国際フォーラムホールB。ご存じの方も多いと思われますが大変近代的な建物です。このまさに近未来空間のような会場で、何百年にもわたる人間の書籍の歴史の展示会が開かれているのはとても面白い・・・そんなことを考えつつ、会場にむかいましたが、古書展初体験の僕は少しばかり緊張してきました。ジーンズにトレーナー。「普段着で大丈夫」と聞いたけれどこんな格好でよかったのだろうか・・・。
さて、入口です・・・特設会場ということでいたってシンプル。とりあえず入場も無料ということなのでまっすぐ入口に突き進もうとすると、
「お客様、お荷物はクロークへおあずけになってください。」
係の方によびとめられてしまいました。よく見るとちゃんと張り紙が・・・やはり高い物では数千万、最高は1億もする品を扱う展示会。貴重品、カメラとメモ以外のものをあずけて入場です。
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まずは雄松堂書店のブースに直行。古書部のIさんとTさんが忙しそうに顧客の対応をしています。平日の昼間なのにこんなにお客さんが・・?ちょっと意外な気がしました。今回、出展品の目玉はマハトマ・ガンディー署名入り自筆書簡(1898年2月23日、Bhajehar宛)です。僕はあまり歴史には詳しい方ではないのですが、さすがにこのインドの英雄は知っています。この展示会準備の手伝いの時にこれを間近で見せてもらい、歴史の教科書に出てくる人物の自筆がこんな身近にある雄松堂古書部ってあらためてすごい・・・と思いました。残念ながらさすがにさわらせてはもらえなかたのですが・・・。それにしても値段を見ると3枚の手紙が600万。驚くことを通り越して自分のまだまだ知らない世界があるのだと思ってしまいます。その他にも雄松堂ブースには中心に並べてある圧巻のディドロ/ダランベール「百科全書」、ついつい見入って展示会準備の手がとまってしまったツュンベリー「日本植物図譜」の初版や、ケンペル/バンクス編の「日本植物精選図譜」などが展示され、また比較的手に入りやすいかわいらしい絵本も並んでいました。
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展示会場
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Oriens Librairie Orientaliste
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さてIさんの手が空いたときに少し一緒に会場をみてもらうことにし、まずは1人で会場をまわることにしました。海外出展のブースと国内出展のブースが混在して、取り立てて仕切りはありません。さらに海外の書店が西洋の物、日本の書店が日本のものを扱っているというわけではなく、海外ブースのガラスケースに錦絵が並んでいたり、雄松堂のような西洋稀覯書を扱う日本の書店があったりという具合でなんとも不思議な空間です。年代もとても年季のはいったものから、ごく最近のものまで。自然と胸が高鳴ります。古書に知識はないけれど、気の向くままに目にとまるものの側にいって間近に眺められる。しかも何百万もする展示品が物によっては手にとって見ることができるのです。こんな展示会見たことがない・・・。それにしても写真などはとってもいいのでしょうか・・・試しにフランスの書店「Oriens Librairie Orientaliste」さんのブースへ。とても気持ちよく写真撮影の許可をいただきました。これは全体の感想なのですが出展されている書店さんは本当に親切で、写真などは快く撮らせてもらえました。 |
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そうこうしているうちににぎやかな絵本のブースを発見。チェコの書店「Exlibris」さんのブースです。つい、引き込まれるように入ってしまいました。絵本でしたら稀覯書とちがって自分にも手にとりやすい気軽さがあります。海外の絵本はやはり日本のものとは雰囲気が全く違い、とても華やかだったり、楽しい挿絵があったりその国の言葉がわからなくても楽しめます。今まで殆ど日本の絵本にしか触れたことがありませんでしたが、古書部で初めて見た海外の古い絵本の色使いや、今ではとうてい採算の面からつくるのが難しいような、凝った仕掛けの本には本当に驚かされました。このチェコの絵本のブースも玩具のように立体的な絵本や、ダイナミックな構図のイラストの絵本で目を楽しませてもらいました。
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日本のブースにもお邪魔します。この展示会にいらした方はやはり日本のものを扱っている書店目当てのお客さんが多いようです。ポストカードや古写真などは数千円から購入できますし、皆さん掘り出し物をさがそうと真剣です。ここ、舒文堂河島書店の息子さんは雄松堂書店で修行したこともあるそうです。とてもきびきびとお客さんの対応をしていらしたのですが、普段は古書店ももうネット販売の時代で、パソコンの入力やらデータ管理におわれているとおっしゃってました。
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その他、古地図や冒険物を中心としたロマンティックなブース(Kunstantiquariat Monika Schimidt ドイツ)、とても立派な装丁や変わった形の本を扱ったブース(Golden Legend, Inc アメリカ)、サミュエルジョンソンの辞書の初版などまさに稀覯書といった書物を展示しているブース(Rulon-Miller Books アメリカ)、写真集などを扱っているブース(Harper's Booksアメリカ)などをまわってみました。時間が経つのを忘れてしまいます。
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Kunstantiquariat Monika Schimidt
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Rulon Miller Books
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Golden Legend, Inc
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Harper's Books
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COPERNICUS
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さて、手の空いたIさんが来て下さいました。とりあえず、今回のイベントでもっとも注目されている書物のあるブースへ案内してもらいます。
Jonathan A . Hill Bookseller
COPERNICUS, NICOLAUS. De Revolutionibus Orbium Coelestium, Libri VI...147 woodcut diagrams in the text. 7 p.1., 197 leaves. Folio (265x187 mm.)18th cent. Italian half-vellum & marbled boards (a few early leaves of text with light foxing), contrasting leather lettering piece on spine. Nuremberg: J. Petreius, 1543. $1,500,000
そうです。あの有名な地動説をとなえたコペルニクスの「天球の回転について」初版本です。150万ドル・・・。これをこんなに身近で見ることができるとは!ブースの方は心地よく承諾してくれましたが、このように写真をとるのも気がひけてしまいました。450年以上昔のヨーロッパを震撼させ、歴史にその名を残した名著がこのように無造作に展示され、こんな身近に見られるとは思ってもみませんでした。これが見られただけでも今日ここに来たかいがあったというものです。「天球の回転について」は雄松堂にもファクシミリ版があるので帰ったら手にとってゆっくり見てみるといい、とIさん。それでも25万円です・・・。
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さて、次にIさん、なかなか素敵なドイツのブースがあるのよ、と案内してくださったのが、Antiquariat Hans Lindner(ドイツ)のブース。なるほどとても明るい色調の絵本が並びます。海外の絵本は先ほどのチェコのブースもそうでしたがとても色使いがビビットなものが多く、キャラクターも表情も豊か。ドイツ語がわからなくても十分楽しめます。
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Le Petit Chaperon Rouge
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「これこれ、ちょっとかわってるのよ」そういってお店の人に見せてくれるようにIさんが頼んだ絵本は両手ですっぽりおさまってしまいそうな小さな蛇腹状のもの。ふわふわとした円形の玉がおおきくなったり小さくなったり移動したり・・・これは?「赤ずきんちゃんよ」とIさん。そういわれてみれば順繰りに見ていくとちゃんとストーリーにそっています。
森におばあさんの家へお使いに行く、赤ずきんちゃんを見付けた狼、先回りして待ち伏せをしようと企みます。おばあさんの家にのりこんだ狼はおばあさんを食べてしまい、おばあさんに化け、まんまとやってきた赤ずきんちゃんまで食べてしまいます。そして狩人が登場、狼をやっつけて、めでたしめでたし・・・。
(Honegger-) Lavater, Warja: Le Petit Chaperon Rouge... Une imagerie (adapted from the fairy tale by Perrault and the Brothers Grimm) d'aprés un conte de [Charles] Perrault. (Paris), Adrian Maeght Editeur (1965). 16x11cm. 41 folded leaves with orig. Lithograph in colour, orig. cloth.
海外の絵本というと華やかで、楽しくて、きれいな絵本ばかり目に留めてきた自分にとって、こうした抽象的な絵本はまた新境地。改めて絵本の奥深さに触れたような気がします。
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蛇腹形状の絵本
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キャスト
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赤ずきんをねらう狼
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おばあさんは狼に食べられる
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赤ずきんもまた・・
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狼のお腹に
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狩人に助けられ
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めでたしめでたし
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さて、今回会場の一番奥に「ルリユールの四面体」と題された製本家による特別展示がされています。古書修復から、アーティストブックのデザインまで国際的に活躍する4名の製本家による作品の展示や、古書修復の実演がおこなわれているということで楽しみにしていました。さすがにその展示空間は今まで見てきた書店のブースとは違い、作品としての書籍が計算されて整然と並んでいます。それにしても形、色、素材の多様なこと。思わず隣のIさんも溜息をもらしていました。形にはこだわらずなめらかな曲線をつかったもの、装丁を自由にくりぬいたもの、ボックス状のもの、これが本?という斬新な物ばかりです。素材も、和紙、革、縄、紐、さらにアクリルといったちょっと想像できないものまで。しかしどれも作品として完成されており、中身がみたくて思わず手がのびそうになります。今までの本の概念が払拭され、新しい書籍のあり方を考えさせられる空間でした。
また、書籍の修復の実演も大変楽しませていただきました。中世では書籍に使用していた革をひきのばす見本があり、珍しくながめていると「一冊の本を作るためにそれこそ何百頭の羊を殺さなくてはならなかったんですよ。」と教えていただきました。考えてみればわかることですが、改めて昔の本というものは丁寧に作られ、大変貴重なものであったのだと思いました。そうした本は何百年たっても、修復することによってその姿を再現し、歴史をかさねることにより作られた当時以上の芸術品になる・・・稀覯書の価値がまたちがった角度から見えてきたような気がします。
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日本と西洋の融合、そして何百年前からの先代の知識の構築、そうしたものが新しい製本の世界で融合し、進化していっている・・・何か今回の展示会のまとめみたいなものを鑑賞させてもらったような気がします</p>
さて今回はじめて古書展を体験してみたわけですが、思ったよりもずっと気軽で見ているだけでも楽しい展示会でした。稀覯書というとどうしても専門的な知識がないと・・・と思われがちかもしれませんが、もっと美術館や、ギャラリーを見るように気軽に来て奥の深い本の世界に触れてみるのもおもしろいかもしれません。
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