1992年に徳島大学総合科学部に就職した頃から、私は、文学作品の中の音楽的な要素、とりわけ、江戸音曲に興味を持ち始め、あらゆる雑誌に掲載された音楽および音曲の記事を片端から集め始めた。『文芸界』の名は、この際にもしばしば目に入った。 この頃、私は、暇さえあれば、雑誌目次総覧の類の頁を繰っていた。いくつかの鍵語を決めて、その記事一覧を作り、記事を実際に集め、そこから改めて論点を導き出すというような、通常とは逆の研究方法を試みるようになっていた。音楽という鍵語はその一例であった。この作業は、実に楽しいもので、これまでとは全く違う世界が、雑誌記事を通覧すると見えてくる。これが、私がたどり着いた一つの研究スタイルであった。作業自体は、何のことは無い、これまでも多くの研究者が地道に行ってきたことであった。ただ作業開始時点で論点が未決定である、ということだけが、私の方法の特徴といえば特徴である。