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Net Pinus 79号

ブックフェア探訪記

2010/06/30
ブックフェア探訪記

 3月11日から13日までの3日間、六本木の泉ガーデンギャラリーにおいて、「2010年国際稀覯本フェア」が開催されました。雄松堂書店も、このフェアに出展しました。
 この体験記は雄松堂書店・古書部のアルバイトとして初めて参加し、見聞きしたことをつづってみたものです。

会場は六本木一丁目の駅からすぐ。エスカレータを降りると、入り口です。このぴかぴかの建物と古書…ギャップのある組み合わせですが、どこか期待感がふくらみます。

高額な商品が多いため、入り口にはちゃんと警備の人が立っています。ちょっと緊張しますね。本を傷つけないよう、余分な荷物はクロークに預けて入ります。

会場の中にはブースが立ち並んでいます。ちょっと迷路のよう。人を見失うと、見つけるのが大変そうです。迷子にならぬよう入口の案内図を確認。

前日にこのコンテナ一杯に積んできた商品を並べて作り上げた雄松堂のブースです。

一番目立つ背の高いガラスケースに、目録の1番、今回の一押しのヒルデブラントの「世界一周旅行」の石版画を展示します。江戸・長崎など日本の絵を中心に。壁にも貼りました。

私が展示を担当したケース。まだまだ古書のことや展示のレイアウトは初心者です。とりあえず本を収めてみましたが、ただ並べただけ・・・。

見かねた部長が、美しい挿絵のあるページや、特徴のあるページを開いて、お客様の目に留めてもらえるように工夫しました。部長の手にかかるとこうなります。確かに足をとめて覗きこみたくなりますね。

本を痛めないように注意して開いています。背表紙が開き過ぎないように、クッションをあてたり、透明なテープでおさえたり。題名や刊行年、値段を書いたカードも横に置いておきます。一番下の段には、布を敷きます。

書店によって、ブースの作り方は様々です。これも勉強!と、会場を一周して、他の書店さんにお邪魔しました。

ここは、一誠堂書店さん。本は立てて置かれていて、題名や値段は表紙に巻かれています。

外国の本屋さんは、全体的にカラフルで華やかな印象を受けました。色とりどりの挿絵の入ったページがたくさん開かれています。こうした目をひく展示の仕方の勉強になります。左は雄松堂のお向かいのブースに入っていたドイツの本屋さん。ガラスケースの中の絵も色彩豊かです。右はフランスの本屋さん。

こうしたカラフルな絵本は、本の中身を読めなくても楽しめます。古書はまったくの素人である私が見ても楽しいものは、他にもたくさんありました。
扱っているのは古書だけではありません。これは百人一首。でも、このお値段では散らし取りなどできませんね・・・。触るのも気が引けます。

絵巻物も、絵本のように絵を見ているだけで面白いです。これは私が気に入った象の格好をした神様?表情が素敵です

これは19世紀のゲームだそうです。「ワルツを踊る帽子」という名前がついています。手前にある三角帽のかたちをした駒を、手のひらの台の上に載せて、はねさせて真ん中にあいている穴のどれかに入れる、というルールのようです。それにしてもこの手・・・計らずしも夜中、机の上にあったらコワイ。
どちらも臨川書店さんにありました。

札幌の弘南堂書店さんにあった直筆原稿。左が室生犀星の、右は内村鑑三の原稿です。ブース正面の「妙」の掛け軸は、棟方志功の書です。

古地図と仕掛け絵本。この写真だとわかりにくいですが、この地図大きいんです。横2m×縦1mくらいあります。仕掛け絵本の方はページの下の方の帯を引くと、上の2匹の羊が動くようです。仕掛け絵本はつい動かしたくなりますが、古いものなのでおそるおそる・・・。

北沢書店さんでは額に入った絵も売っていました。

今年ならでは、という展示もあります。左は平城京遷都1300年に合わせた八木書店さんの企画。右は大屋書房さんのブース。奥の掛け軸は、坂本龍馬です。

取材を受けた小川図書さんの目玉商品、目録の1番は、ラフカディオ・ハーンの自筆書簡です。

これがイギリスの本屋さん(Peter Harrington Antiquarian Books)が出品した「ピーター・ラビット」の私家版初版本。1200万円!!そのわりに、説明は手書きです。ご愛敬。これもメディアで取り上げられたそうで、この本を見に来た、というお客さんもいらっしゃいました。

写真や美術書を扱うBondi Booksさんの隣には、掛け軸や絵巻物を扱う思文閣さん。不思議な眺めです…。壁一枚向こうは、まるで違う世界です。

雄松堂のお隣は、舒文堂河島書店さんです。九州の地誌に関係する本を中心に扱っておられます。河島さんの息子さんは以前雄松堂でお仕事をしていました。今は立派に河島書店を手伝っています。

会場内でコーヒーも飲めます。コーヒー片手にゆっくり座って、目録を検討して、もう一周!

最初に会場を見たときは、ブースの数がそれほど多くないのかな?と思いましたが、一つひとつの本屋さんをじっくり見ていくと、意外に時間がかかります。ブースの中にその本屋さんがぎゅっとつまっていて、密度が濃い!“小さな神保町”、という感じを受けました。コーヒー屋さんもあるし。あとはカレー屋さんがあれば完璧です。来年は是非おねがいしたいところです。

見てまわるだけでなく、アルバイトとして、お客様に雄松堂ブースでのご案内の経験もしました。
こうしたしかけ絵本にはたくさんのお客さんが興味を持って下さいました。手に取ってご覧いただけます。古書展に来られた折にはお気軽にお申し付けくださいね。

それにしても、お客さんに話しかけるタイミングは難しいです!じっくり見ているのを邪魔しても悪いし、折角見ていただいていたのに、話しかけたのをしおに離れていってしまわれることも・・・修行がタランのです。
しかし、そんな私とは違って、雄松堂はもちろん、他の書店の先輩方はお客さんをよく見ています。話しかけるタイミングや、興味がありそうだという判断を外しません。すごい…!!
さらに、他の書店の商品を見る目も鋭いです。フェアは、もちろん、お客さんに商品を提供する場ですが、同時に本屋さん同士の仕入れの場でもあるのだそうです。お互いの品揃えチェックにも余念がありません。
でもそんな中、写真撮影は皆さん笑顔で承諾して下さいました。ありがとうございました。
古書部でアルバイトしているにもかかわらず、実は今まで本物の神保町の古本屋さんにはお店の人の鋭い眼光に気後れして入れませんでした・・・。しかし、このフェアを体験して、これは実際に行かなくてはと決心しました。目線が鋭いのは、お客さんを見ているからこそ。怖がらずに、足を踏み入れてみようと思います。
古書が少しだけ身近になったような・・・そんな展示会でした。

79号 2010/06/30
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