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雄松堂雄松堂出版国語・国文学>複刻版「近代文芸雑誌稀少十誌」

日本のリトルマガジン」第4弾

複刻版 近代文芸雑誌稀少十誌


紅野敏郎(早稲田大学名誉教授・日本近代文学館常務理事) 編集・解説

菊判 10誌13冊 付解説 四方帙入
2007年2月刊行 ISBN 978-4-8419-0442-0
定価79,800円(本体76,000円+税5%)


ここに取り上げる十種類の雑誌は大正2(1913)年から昭和4(1929)年に刊行されたもので、ほとんどが創刊号のみという非常に短命に終わった同人雑誌である。大正時代、若い文学志望者の盛んな創作活動によって、多くの同人雑誌が創刊されては消えていった。時代を主義、主張、思想や流派などでたどるのでなく、それら雑誌相互の関係、同人雑誌における執筆者の人間関係などを通して横に眺めていくことで、文学史のナマの現場の風景を確認することができる。文学史上重要な意味を持ち、なお今となっては入手困難な稀少雑誌ばかりを、原装に忠実に再現したものである。

収録内容
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「ル・イブウ」(LE HIBOU) 創刊号 大正2年2月1日 木兎社
「異端」創刊号、第2号 大正3年9月1日、大正4年1月元日 異端社
「智慧」第1号 大正7年4月10日 阿蘭陀書房
「リラ」第1輯 大正9年10月9日 リラの花詩社
「茜ぞめ」創刊号 大正10年11月1日 茜ぞめ社
「新興」創刊号 大正13年2月1日 新興社
「ダムダム」創刊号 大正13年11月10日 南天堂書房・ダムダム会
「藝術運動」第1号 大正14年9月1日 藝術運動社
「春鶯囀」創刊号、第3号、第4号 大正15年1月1日、3月15日、5月1日 春鶯囀詩院 
「没落時代」四月創刊号 昭和4年4月1日 没落時代社

※ 「日本のリトルマガジン」既刊分については、お問い合わせください。

文学史の砂金をさがして

紅野 敏郎

紅野敏郎 氏

 山高きが故に貴からず。真の山の高さはその裾野の豊かなひろがり、その裾野の重厚さ、のびやかさによって、はじめてその山が「名山」と呼ばれることになる。これは私たちの近代文学研究の領域においても同様だといってよい。
 文学史の頂点、極めつきの文学者、名作、傑作を対象とすることは当然必要。しかし、同時にその周辺を広く、深く見渡してみると、意外に楽しく痛快な情報、あるいは埋もれた作家、作品に遭遇することがきわめて多いことに気がつく。その周辺とは山についていえば、裾野にあたる。
 明治以降の主流となった諸雑誌群―文芸雑誌に限っていえば、「新小説」「文芸倶楽部」や「早稲田文学」「三田文学」、あるいは「文学界」「明星」「白樺」「文芸時代」などになるし、総合雑誌では「国民之友」「太陽」「中央公論」「改造」「文藝春秋」などになる。それらを一冊一冊手にとって繰っていけば、文学史のナマの現場の風景がキャッチできる。しかし時代の主流のかたわらに、小さく頭をもたげている小雑誌、とくに創刊号が終刊号というような一冊のみで終ったもののなかにも、必ず砂金がキラリと含まれていて、それを見逃しては全体像の把握にゆがみが生じてくる。
 主流を尊重する姿勢をつねにとりつつも、片隅で、微妙だが、確実で真摯な花を咲かせている入手困難な希少雑誌群を、いとほしみの眼で眺め、それらをつぶさに収集、検討することの楽しみは格別といってよい。入手困難な初出誌の確認作業は、文学史、文壇史の現場に立ちあうことであり、交錯しつつ雑居する同時代の文学者の実態を見つめ、縦軸、横軸の追及に役立つ。また作家の初心、その出発状況を押さえることができる。
 このたびの十誌の稀少雑誌のなかより、幾粒の砂金が拾い出せることか、また文学史構築の有効な手がかりが発見できることか。文学史、文壇史の現場感覚が肉体にきざみつけられ、従来の文学史、文壇史の微調整が可能になる。頂上を遠望し、微視に徹し、かたわらの小さな花の精いっぱいの声に耳を傾けたい。

(早稲田大学名誉教授・日本近代文学館常務理事)

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