雄松堂書店出版事業部英語・英米文学アメリカ文学ライブラリー

アメリカ文学ライブラリー  

体裁:菊判 上製 クロス装 各巻400〜800頁 
定価 各巻15,750円〜21,000円(税込)


「アメリカ文学ライブラリー」を推薦します


大橋健三郎 

 前田絢子教授(フェリス女学院大学文学部)と荒このみ教授(東京外国語大学)監修の、ほとんどがグリーンウッド出版グループ刊行になる事典の翻訳『アメリカ文学ライブラリー』全16巻が、いよいよ今春5月より2008年1月まで4回に亘って、3〜5冊ずつ刊行されるという。対象になっている作家・詩人は、ホーソーン、ポウ、メルヴィルなどの古典的作家から、19世紀トウェインやH・ジェイムズ等のいわば中期の小説家、さらにドライサー、パウンドほかの世紀末から20世紀初頭へかけての代表作家、そしてフォークナーから現代のトニ・モリスンやアップダイクへと現代作家に及び、すべて事典形式になっていて、それぞれ名の知れたアメリカの専門研究者の著で、わが国の有能なアメリカ文学者たちがそれらの翻訳に当たっている。
 出版順序は作家の年代順ではなく、例えば第1期刊行は、ホーソーンのほかはフォークナー、モリスン、アップダイクと、現代作家事典になっていて、現代と過去を繋ごうとする監修者の意欲的な配慮を思わせる。――かくしてアメリカの文学を専門の研究対象としている者に対して、手ぬかりなく研究対象である作家の諸特質を視界に収める便宜を提供するだけでなく、一般の文学愛好者にも楽しく役に立つ鑑賞の手引きとなり、研究室、図書館で役に立つことは疑いない。各方面に推薦する所以である。

(東京大学名誉教授)


監修のことば


前田 絢子 

 いまどき文学百科を出すというのは、いかにも時代錯誤のように感じられるかもしれない。そもそも文学という言葉が死語か、そうでなければ亡霊のように受け取られかねない時代なのである。IT化の大波が世界を呑み込んで久しい。その間に、スピードと効率がものごとの尺度に定着した感がある。雄松堂出版からこの度、アメリカ文学の本格的かつ基礎的な百科事典シリーズを出版したいという話があったとき、世の風潮に逆行するようなことが本当にできるのだろうかと、いささか不安だった。と同時に、こういう時代だからこそ、何とかこの企画を実現させたいという強い思いが沸き起こった。文字が情報として以上の意味を持つことを、文学が人生の深淵に迫る力を秘めていることを再確認する絶好の機会になると思われたからだ。文学に踏み込む際に、事典がどれほど拠り所として便利なものかを痛感してもいた。採算が合うとはとても思えないこの地味な企画を、レファレンス関係に強い雄松堂が引き受けてくれたことに拍手を送ることにしたのである。
 アメリカ文学の面白さの一つは、アメリカという国のもつダイナミックな文化や騒々しい歴史、分かりそうで分からない社会が、ほとんど生の形で繰り返し問われることである。豊かな想像的世界に、現実が鋭く刷り込まれている。そこには現代人が今かかえている問題への鍵がある。そんなアメリカ文学を代表する16人の作家を取り上げ、単に項目別の情報提供に留まらない、「今」を読む事典としての本翻訳シリーズは、我が国のアメリカ文学研究における画期的な里程標となるはずである。

(フェリス女学院大学教授)



荒 このみ 

 戦後のアメリカ文学翻訳ブームを知るものにとって、近頃の文学状況はいささか寂しい感じがいたします。テクノロジーの発達により、アメリカとの地理的距離が近くなった今、さらに文学を通して精神的な距離や親しみが、近くなり深まることが望まれます。この『アメリカ文学ライブラリー』の刊行が、ふたたびアメリカ文学の広がりへ読者の目を向けさせ、幅広い読者への刺激になり、さらにはアメリカ文学研究の発展に役立つことを願っています。
 戦後のブームはたしかにアメリカ文学の世界へ私たちの目を向けさせましたが、日本における外国文学の紹介および受け入れが常にそうであるように、対象が偏ってしまうことを免れることはできません。『ライブラリー』は、代表的なアメリカ文学の作家を時代の枠を越え、ジェンダーおよび民族的背景を越えて選んでいます。事典を読むことによって作家と作品への理解が深まり、文学の強い力が、読者の精神の領域において大きく作用することを願っています。
 各巻にはそれぞれの特徴がありますが、登場人物や作品のあらすじ、事実の羅列を客観的に叙述することだけを目標にした事典ではありません。対象作家のあらわした文学の全体像が把握できるように仕組まれています。項目執筆者の個性が生かされた解釈が述べられているところもあります。作品に関して忘れた記憶をたどるためにも役に立つ『ライブラリー』ですが、それ以上に、対象作家の文学および文学観が浮かびあがってくる「図書館」です。

(東京外国語大学教授)

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