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雄松堂書店出版事業部国語・国文学>都わすれの記

第45回「造本装幀コンクール」出版文化国際交流会賞受賞

都わすれの記

コロンビア大学出版局・雄松堂書店共同企画
Memoir of Forgetting the Capital
都わすれの記

谷崎 潤一郎 著/エミー・ハインリック 訳/ドナルド・キーン 序

A4判変型 上製クロス装 無双帙入 68頁 2010年11月刊 
ISBN 978-4-8419-0547-2

定価12,600円(本体12,000円+税5%)

英詩としてよみがえる谷崎の短歌

 花の名は都わすれと聞くからに身によそへてぞ侘びしかりける――昭和19年、谷崎は戦火を逃れ、京都を離れた。疎開中の2年間に詠まれた短歌72首は、昭和23年3月『都わすれの記』として創元社より刊行された。
本書はその全てをアメリカの歌人が英詩として訳出したものである。日本語の原文に英詩を添え、原著を飾った松子夫人の書と和田三造による挿し絵を口絵として収録し、ドナルド・キーン氏による序文と訳者による解説(英文)を付した。小説に対する評価に比して、従来谷崎の短歌は注目されることが少なかったが、ちょうど『細雪』執筆の時期とも重なり、戦争の影もうかがわせるこの頃の歌は、谷崎文学の側面を伝えて貴重である。

すみよしの松のみどりは変らねど頼みし蔭はつゆしげくして
Sumiyoshi no matsu no midori wa kawaranedo
tanomishi kage wa tsuyu shigeku shite

the deep green
of the pines of Sumiyoshi
does not Change,
but how thick the dew is now
in the shade I so enjoyed

 谷崎潤一郎の文学を愛する多くの読者にも「都わすれの記」を知っている人はあまりいません。歌人の谷崎は小説家、劇作家、評論家の裏にそっと潜んでいるような存在ですが、短歌にしか現れない谷崎潤一郎もまた無視できない存在です。戦時中、地方の山村に疎開した谷崎は大都会の空爆から逃れられたとはいえ、不安は常に消えず、焼け出されたことも数回ありました。そのうえ、若いころから軍部を憎んだ谷崎には、戦争が長引くにつれ、苛立ちも益々増していきました。小説などには見られなかった、そんな谷崎を知るにも「都わすれの記」は殊に貴重です。また、夫人に寄せた愛情も美しく描かれています。

ドナルド・キーン「日本版に寄せて」より

訳者 エミー・V・ハインリック(Amy V. Heinrich)
1980年米コロンビア大学博士号取得、1990年から2008年までコロンビア大学極東図書館館長。日本文学、特に短歌を斉藤茂吉の歌を通して研究。自身も詩人として活躍している。
主著 Fragments of Rainbows: The Life and Poetry of Saito Mokichi 1882-1953(1983年 コロンビア大学出版局)

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