第191葉裏:

弓矢を持ち、二匹のビーバーを追う狩人。狩人たちの目的は、薬効があると言われるビーバーの「麝香(じゃこう)袋」である。ビーバーは逃れるために自ら「麝香(じゃこう)袋」を噛み切っておいていく。著者によれば、ビーバーのラテン語名「カストル」(castor)はこの去勢行為(castration)に由来する。同様に、人間も悪魔の手に落ちないためには、あらゆる悪を捨て去らなければならない。つぎに描かれているのは、角の強さで知られるアイベックスである。高所から落ちたアイベックスが二本の角のおかげで助かる様子が、挿絵のなかにたくみに描かれている。神学的見地からみれば、これら二本の角は旧約聖書と新約聖書を象徴している。逆境に陥った人間を支えるのは両約聖書だからである。ハイエナは古典古代の著作家ソリヌスの記述にもとづいて詳しく説明されている。穢(けが)れた動物であるハイエナは、墓をあばいて死体をむさぼる。また、人間や家畜の声色をつかって人や家畜をおびきだしては襲いかかる。

第192葉:

中世動物譜には異国のさまざまな動物や、空想上の動物も登場する。アジアに生息する雄牛に似た「ボナコン」は、古くは大プリニウスの『博物誌』にも紹介されている動物である。本書の写本画家は、ボナコンの角が内側に向いている様子など、テクストの説明に忠実にこの動物を描いている。つぎの挿絵には二匹の猿を狩る様子がいきいきと描かれている。猿を意味するラテン語の「シミア」(simia)は猿と人間の類似性(similitudo)に由来するとテクストは説明している。二匹の子猿を連れて逃げる雌猿は、いっぽうの子供を背負い、もういっぽうの子供を抱きかかえている。ほかにも数種の猿についてテクストは言及している。サテュロスは、人なつっこい顔だちと美しい毛皮をもち、とびはねるように動く猿の一種であり、捕らえるのは容易だが、エチオピアでしか生きながらえないと説明されている。このページの最後の挿絵では、小さな画面のなかに一望の景色をみることができる。前景には蛇を食べる雄鹿が、背景には浅瀬をわたる鹿の群れが描かれている。