雄松堂書店出版事業部ULYSSES

 ジェイムズ・ジョイス(James Joyce, 1882-1941)が著した20世紀モダニズム文学の金字塔であり、小説の歴史における重要な分岐点を画した擬似英雄叙事小説。ホメロスの「オデュッセイア」の構造を借りて、1904年6月16日のダブリンでの平凡な一日における登場人物の意識の流れを徹底的に描き尽くした本作は、1918年からのアメリカの雑誌「リトル・レヴュー」に連載されたが、1920年には風俗を害するという理由で裁判沙汰になった。この時点で、当時この雑誌のヨーロッパ通信員だったエズラ・パウンド(Ezra Pound, 1885-1972)がジョイスが執筆する上での援助をしたことは有名である。連載された4号分が当局により押収、消却という憂き目を見てもジョイスの創造力、創作欲は衰えることはなかった。裁判沙汰を恐れずに出版に踏み切ろうとする出版社を探す努力を続けながら、加筆、訂正、構造やスタイルの変更を繰り返して作品に磨きをかけていった。
 そしてついに、パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店のシルヴィア・ビーチ(Sylvia Beach, 1887-1962)が単行本の出版に踏み切った。ビーチは、予約を積極的に集めることで出版に必要な資金の獲得に成功した。またビーチは、ジョイスに対して彼が完全に納得する形に作品を仕上げられるようにゲラ刷りを何度見直してもよいということを印刷業者との合意のうえで約束した。その結果、ジョイスは全く妥協することなく作品を完成し、出版することができたのである。初版は、上記のような紆余曲折を経て、1922年2月2日、ジョイスの40歳の誕生日に限定1,000部で刊行された。アメリカでの出版は1934年、イギリスでの出版はパリ版から実に14年後の1936年であった。


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