■署名をしていただいて、どういう印象をお受けになられましたか。
非常に力強い字を書く人でしたね。いわゆる上手いというわけではないのですが、非常に大きくたくましい字を書く・・・老人の字とは思えない字を書く人だなと。書体には迷いがなかったですね。
■書いた作品からイメージして直接作家に会ってみると大分かけ離れていた、といった事を聞くことがあるんですが。
違う場合とイメージ通りの場合があります。志賀直哉の場合はイメージに近いものがありました。彼は常磐松の國學院に近い場所に最後の家を建てました。奈良の家も含めて、23回も転居したのですが、ほとんど借家だったんです。放浪派というわけではないんでしょうけど、あまり一カ所にこだわらない作家だったんでしょうね。常磐松の家は豪華な家ではなく、素朴な実生活がそのまま出ている居住空間でした。訪ねていくと居間兼、応接間兼、書斎兼の部屋に通される。好みの絵などが掛かっていたりして、自分の趣味を自然な形で出されている。成金趣味、やぼったさといったものが一切排除されていました。志賀直哉の本の造りにもいえる事ですが、表面的な贅沢というより、むしろおのずと現れる品格の高さがあったんですね。