■今回、ご紹介頂いた本は本当にしっかりした作りの、個性溢れる本が多いのですが、今の出版社では出来にくいことなのでしょうか。
今はねえ・・・。少部数で出版しても割にあわないとでもいうのかな・・・。かつてはこの作家の本ならこの読者が買うというような形があったんです。
■ある意味で読者の人数が割り出せたということですか。
ともいえますが、勿論、今みたいに何万じゃないですよ。尾崎一雄が「俺の読者は3千人以内だ、もうそれで十分だ」と言っていましたけれど、その読者というのは尾崎一雄の本が出たら買ってくれる本当の読者のことを指しているのでしょう。それにしても3000人もいい読者をもてば、それは幸せですね。
■その読者は多少値の張る本でもこの作家のものであったら、信頼して買ってやろうと思うわけですよね。
ええ。だから作家の方もあまり、大量生産で本が出ることを期待していなかったし、出版社も促さなかった。本当はこういう形でないといけないんでしょうね。いい本を作るなら1000から3000、少ないときは300くらいの出版形態が望ましいと感じますね。
現在の出版社の状況はとにかく多く、安く、早く、を追求してしまい、その結果、似たような本が店頭に並んでしまう。そして3カ月経つとほとんど消えてしまうわけでしょ。非常に無駄なことだと思いますね。
■何万人の読者に向かって書かなくてはいけない作家も不幸ですね。10万人が1年読んでくれるよりも300人の読者に10年読んでもらう方を作家なら望むべきなのかもしれませんね。
やはりいい本を作ることにおいては大量生産は意味がないんですよ。すぐにベストセラーの順番を調べて出すようなことをしている情報はあまり価値がないですね。
■読者の側も結局自分で本が見つけられなくなってしまっているのではないでしょうか。結局ベストセラー情報のようなものに頼るほかない様な気がしますね。今、求めている読者側と与える作家の側の関係が希薄になってしまったので、なかなかいい本が出版されないことひとついえるかもしれませんね。