アダム・スミスと「道徳感情の理論」

スミスの墓碑 アダム・スミスといえば、だれでもすぐ想いうかぶのは「国富論」であろう。そして経済学の創始者だというのが常識的解答であろう。しかしスミスは、実はもっと広い学問領域−神学・哲学・倫理学・法学・経済学を含む学問領域−18世紀においては「道徳哲学」と呼ばれていて「自然哲学」に対応する学問領域−の教授であった。

 その彼が最初に公刊したのが、ここに紹介する「道徳感情の理論」(1759年)であって、スミスの処女作である。本書によって、彼は、イギリスにおいてのみならず、大陸においてもまた、哲学者としての名声を確立したのであった。

 1759年(MDCCLIX)年出版のこの本のタイトル・ページは写真で見られる通りであるが、本書の第1ページは次の文言で始まっている。「人間がどんなに利己的なものと想定されうるにしても、あきらかにかれの本性のなかには、いくつかの原理があって、それらは、かれに他の人びとの運不運に関心をもたせ、かれらの幸福を、それを見る喜びのほかにはなにも、かれはそれからひきださないのに、かれにとって必要なものたらしめるのである。スミスのお札この種類に属するのは、哀れみまたは同情であって、それはわれわれが、他の人びとの悲惨を見るか、たいへんいきいきとしたやりかたでそれを考えさせられるかするときに、それにたいして感じる情動(エモーション)である。....この感情は、人間本性の他のすべての本源的情念と同様に、けっして有徳で人道的な人にかぎられているのではなく....最大の悪人、社会の諸法のもっとも無情な侵犯者でさえも、まったくそれをもたないことはない。」

私の蔵書中で最も重要なものは、この一冊(初版)であるが、スミスは、その生存中に、本書を第6版(6版からは2巻となる)まで公刊した。私は、約40年かけて、初版から第9版(1801)まで全部を所蔵する念願をはたした。


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