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ほんの世界はへんな世界 第十四回 |
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TAKAMIIYA'S ESSAYS ON THE BOOK (XIV)
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20日の午後、私は特別講演をさせていただいた。誰にでも分かる話をと思い、「中世と中世主義を超えて」という題を選んだ。専門分野に閉じこもるのではなく、日本人がやる英文学研究にはそれにふさわしいことがあるのではないか、というメッセージを伝えたかったのである。慶應義塾大学のキャンパスは三田綱町と呼ばれた一画にあったのをよいことに、羅生門で有名な渡辺綱がここで生まれたとされることから始め、英語最古の叙事詩『べーオウルフ』の前半部分の怪物退治が綱の鬼退治と似た点があること、そしてその類似点に最初に気づいたのは日本人ではなく英国人で、1901年だった、といった話を、パワーポイントを用いて70分ほどした。(講演会レジュメ:PDF) 講演の準備は春休みから本格化させた。渡辺綱の話が1900年以前の英語圏でどの程度知られていたかを知りたかったので、図書館員にも情報を依頼し、こちらはインターネットで探し、さらには神保町へ出かけた。そこで分かったのは(今頃分かったのかと、お叱りを受けそうだが)、神保町の古書店の相談係の方が実に有益な情報を教えてくれることだった。
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12歳のときから神保町に通ってきた私だが、近年はどういうわけか足が遠のいていた。それが最近、慶應愛書家倶楽部の若手メンバーに穴場を教えたいという思い絶ちがたく、3月中旬に院生を誘って古書ツアーに出かけてみた。すると、瞬時にして昔の気持ちに帰るのだった。院生たちが次々と良書に手を出すのに驚き、もっと早く連れてくればよかった、と反省。その後はゼミの学部生まで連れてくることになった。それにはわけがある。
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神保町の洋書の古書を扱う店を訪れるとき、私が一種の指標にする本がある。詩人で画家だったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの没後に大型本で出版された画集、H. C. マリリエ著『ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ―彼の芸術と生涯の追悼図録』(ロンドン・ジョージ・ベル社、1899)である。1990年代初めに私はコンディションのよい本を25万円で入手した(もっとも数年後に、雄松堂書店の目録には、詩人のA.C.スウィンバーンが妹に献呈した若干よごれのある本書も9万円で落札した。これは私にとってはバーゲンだった)。現在神保町では少なくとも3軒の古書店にあるが、いずれも7-9万円であり、インターネットで見つかる価格より低い。
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というわけで、講演用に古書を探し始めたのに、我が体に巣食う本の虫が動き出してしまったのである。それにしても神保町の古書店主はお元気この上ない。崇文荘では、90歳を優に超えた佐藤さんが、脚立の上に乗って、セット物に値段表を貼っていた。若い店員が下から見上げていたので、思わず「逆だろう、落ちたらどうするの」と叫んでしまったが、どうも言うことを聞かないらしい。大屋書房の纐纈さんは自転車を操って通りを走っているところに何度も遭遇、とうとう店に入ってしまい、渡辺綱に切り落とされた腕を取り返した鬼婆を描いた月岡芳年の浮世絵を買った。古書通信の八木さんも矍鑠としているというし、神保町を離れたところにある雄松堂の新田会長だって、依然として年齢不詳の活躍ぶりだ。 |
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