|
ベインズの跡を継いで同社の経営者となったのが、ウォーバーグ投資銀行にいた第4代パーモア卿フレデリック・アルフレッド・マイロ・クリップス(1929−2008)であった。同時に友人でスーパーマーケットを経営するサイモン・セインズベリーも経営陣に入った。皆が親しげにマイロと呼ぶパーモア卿は、母親の影響でカソリックのパブリック・スクールで教育を受け、16歳でオクスフォード大学に進む奨学金を獲得した。しかし、時期早尚と考えたマイロはパリに赴いて、フランス語とロシア語を習得した。ドイツ語も堪能だったので、第2次大戦後彼はベルリンで通訳として活躍した。
 |
| Parmoor: sold the manuscript of Turgenev's 'Fathers and Sons' to the Soviets |
一時アルコール依存症に陥ったマイロは、オクスフォード大学を中退し、富裕な家族状況を背景にさまざな事業に取り組んだが、ウォーバーグ投資銀行で大いに経営手腕を買われた。クォリッチ古書店の取締役社長、次いで経営者となったが、マイロは古書にさほど関心があるわけではなかった。しかし、競売で大物を落札する豪胆さは夙に名高い。
1977年、彼はアメリカの古書の大コレクター、ウォルター・プフォルツハイマー所有のグーテンベルク聖書を買い上げて、テキサス大学に納めた。その後彼の初期英文学の一大コレクションも同じ運命を辿った。1983年には、ドイツにとって至宝といえる豪華な中世装飾写本ヘンリクス獅子王の福音書がサザビーで競売に付されたとき、マイロはドイツ銀行幹部らとコンソーシアムを結成して、最終的にドイツが獲得した。
1988年にツルゲーネフの『父と息子』の自筆原稿を購入したマイロは、ソヴィエト文化財団の理事長だったゴルバチョフ夫人に直接手紙を書いたという。現在これはペテルブルクのプーシキン邸に収蔵されている。 |