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香港国際古書展
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1月17日から三日間、香港の国際展示場で第2階香港国際古書展が開催され、講演のため生まれて初めて香港に出かけた。イギリスには百回以上行っているのにと、友人たちは可笑しがる。与えられた講演の命題は、私自身の洋古書収集40年の体験から、なぜ日本という西洋文化から離れた市場で洋古書が売れるのか、あるいは売れたのか、同じ考えで中国市場でも高価な古書を売ることはできるのか、を話してくれという難問だった。
大昔から中国の文物、宗教、諸制度を規範として仰ぎ見ながら蒐書してきた日本人だから、明治維新になって政府が西欧化という工業化政策に舵を切った際に、収集相手が中国の古書から西洋の書物移入に変化したとしても、十分説明はつくだろう。とりわけ1980年代から90年代前半にかけて経済バブルに沸き立ったわが国では、大学の図書予算は毎年10%以上の伸びを示し、その結果貴重書購入のための予算も伸びて、インキュナビュラや『西洋をきずいた書物』(PMM)に挙げられた名著の初版が収蔵された。またわが国に9セットも将来したケルムスコット・プレスなどの私家版、イギリスの古書店が築いた膨大なセット物の古書コレクションも記憶に新しい。洋古書の個人収集家も数は少ないが育ってきた。
同じように中華思想の強い中国で、また文化大革命という焚書坑儒を体験した中国で、古書収集への熱が起こるのだろうか。関心の火をつけるにはどうしたらよいか。これを予測することは難しい。確かに香港におけるアジア絵画の競売市場は昨夏まですさまじい勢いを示していた。しかし一瞬にして襲った経済危機のため、この先どう展開するかは五里霧中の状態だ。況や古書市場をや。
私は、欧米の大学や大学院に留学している夥しい数の中国人研究者が、早晩西洋の文化に目覚めて、成功者がその文化遺産に関心をもつ日が必ずや来ると考える一人である。そして中国マネーがそちらに動く可能性はあると思う。オスカー・ハンドリンは『アメリカの人々』で、20世紀前半の成功したアメリカ人家庭には必ず一点以上のインキュナビュラがあったと言明したし、私たちは日本でもほんの20年ほど前に洋古書ブームが起きたのを目撃した。私は、膨大な中国市場に景気が回復する暁には、同じ現象が起こるのではないかと考え、そのときの受け皿を協力して作り上げることの重要性を強調した。