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ほんの世界はへんな世界 第三回 |
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TAKAMIIYA ESSAY ON BOOK (III)
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『ロリータ』出版50周年
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冒頭の『ロリータ』に関するエピソードからして凄い。ロシアから亡命してアメリカの大学で教鞭をとっていたウラディミール・ナボコフが、1955年にパリで出版した本書は4年後にイギリスでも出版された。世界中に衝撃を与え、ロリータ・コンプレックスという言葉を生んだ小説である。すでに2度映画化された。1988年の古書目録に、ゲコスキーは1959年のイギリス初版で著者から従兄弟夫婦に献呈した本を掲載し、3,250ポンドの値を付けた。1ポンド200円と換算して、日本円で約65万円である。ゲコスキーは小説家で古書収集家のグレアム・グリーンにも目録を送っていたせいか、しばらくすると次のような短い手紙が来た。
出版年に献呈されていたらもっと市場価値が上がったはずの現本だが、ゲコスキーは4,000ポンドで買い取った。ところが、翌朝ゲコスキーのマンションにやってきたのは、エルトン・ジョンの作詞家バーニー・トービンとその夫人だった。ちょうどクリスマス・シーズンで、夫人は夫のために何か古書を探しに来たのである。二日酔いで頭が回らぬゲコスキーは、本書を9,000ポンドで売った。一夜にして2倍以上の価格に跳ね上がったわけだが、ゲコスキーは後にこれを後悔した。この本は、1992年に邦貨2600万円、2002年には何と3億円という驚天動地の値で取引されたのである。
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しかも、サンデー・エクスプレスの編集長はこの小説をこき下ろしたので、その後の論争の結果、本書は誰でも読みたい小説になったのである。多額の印税のおかげで、ナボコフは大学の教授職を辞し、後は執筆と蝶の採集に専念することができた。
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ゲコスキーは『トールキンのガウン』の中で、『ロリータ』に始まって、トールキンの『ホビット』、ゴールディングの『蝿の王』、ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』、ケルアックの『路上』、ジョイスの『ユリシーズ』、ロレンスの『息子と恋人』などなど、J.K.ローリングの『ハリー・ポッター』に至るまで、20の作品を取り上げて、作品の誕生秘話と現在における初版のアソシエーション・コピーの相場を楽しそうに語ってくれる。しかもゲコスキー自身がそれに拘っている場合も1,2例にとどまらない。 (高宮利行 慶應義塾大学教授) |
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