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ほんの世界はへんな世界 第四回 |
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TAKAMIIYA'S ESSAYS ON THE BOOK (IV)
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グロスター公爵旧蔵の『狩猟の管理者』写本
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その3日前、私はクリスティーズで貴重書デジタル化を推進するHUMIプロジェクトに関する講演を行うことになっていた。1月23日の午後、大英図書館で打ち合わせを終えてクリスティーズに出かけたところ、講演の主宰者で古書部門のメグ・フォード博士に迎えられた。ただちにグロスター公旧蔵の中世写本を3点見せてくれた。出てきた2点、『狩猟の管理者』Master of Gameと鷹狩りの教則本は競売前に、相続税の絡みで大英図書館に売却されたという。後者は未刊行の英語散文の作品で、いずれも公爵が好きな狩猟や鷹狩りに関する15世紀写本である。ともに興味深い手書き装飾絵があった。20世紀最大の狩猟関係書を誇ったシュワート蔵書の売り立てで1500点もの古書を購入した公爵ならではの逸品だ。
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ヨーク公は『狩猟の管理者』の序文で、英訳版を皇太子(後のヘンリー5世)に献じ、自らを現王ヘンリー4世の「狩猟の管理者」と呼んでいる。この作品が1904年に初めて印刷に付されたとき、こともあろうに米国第26代大統領だったセオドア・ルーズベルトが序文を寄せたほどであった。
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さて、イギリスの王室の相続税に関心をもたれる読者もいるに違いない。2002年に100歳を超えて長逝したエリザベス皇太后の遺産は、長女であるエリザベス2世のもとに相続税なしに入った。これは「君主から君主へ」の相続は税なしと定められているからだ。ところが、エリザベス女王の叔父で1974年に死去したグロスター公の場合は、ハロルド・ウィルソン首相が率いる労働党内閣の税制が、一般人と同じく適用されてしまったのである。いかにも労働党らしい政策だ。そして、50万ポンド以上と評価される遺産に関しては75パーセントという高率の相続税が課されたのである。グロスター公爵を継いだ長男はこれを払うことは出来なかったが、政府は前公爵夫人アリス王女が存命中はその執行を免除した。2004年に102歳の高齢でアリス王女が亡くなったとき、その相続税率は40パーセントに下がっていた。今回のクリスティーズにおける競売は、その結果であった
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1月31日の『サンデー・タイムズ』紙は、「屋根裏にあった現金―公爵の埃まみれの宝物5百万ポンドで売れる」という見出しで競売結果を報告した。「屋根裏で埃まみれだった」とは言いえて妙で、実際ヘンリー王子の誕生を祝してヴィクトリア女王が贈った銀製ボウルなど、まず日常生活では使用されたことのない宝物ばかりだった。
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ちなみに23日に行った私のデジタル講演は50名以上の出席者を得て、何とかうまくいった。レセプション会場には、グロスター公旧蔵の狩猟写本の目録解説を作ったトニー・エドワーズ教授の姿もあった。一緒に美味しいワインとカナッペと会話を楽しんだことはいうまでもない。 (高宮利行 慶應義塾大学教授) |
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