ゴヤ 銅版画集「気まぐれ」 |
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「気まぐれ」とゴヤの知略
■「全世界の画家」への脱皮
「気まぐれ」刊行の七年前、ゴヤは突然、大病を患って死にかける。梅毒治療のために水銀を使って副作用をおこし、のたうち回って苦しむ、そして全聾になった。 絶望の深淵をさまよって、初めて「現実」にめざめた、と堀田は言う。 「眼をひらいて、音のない、人間どもの日常を見るだけで足りる」。 命令されて、王室用のタピストリー・カルトンや風俗画や肖像画を描く「人工的世界の画家」から、むき出しの真実をつかみとってくる「全世界の画家」への脱皮であった。 ■アルバ公爵夫人との恋愛によってそして時はフランス革命の余波が押し寄せる堕落スペインである。その中で、ゴヤは一世一代の、かの有名なアルバ公爵夫人と恋愛をするのである。「ゴヤは、このアルバ公爵夫人によって、男と女というものが存在する、しかもこの二種類しか存在せず、そうしてこの二種類によって天国的崇高から堕地獄の悪にいたるまでの全振幅をもった人間世界が構成されるものであったことについての、あるたしかな認識に達したものであったということは、それはいえることであろう」と堀田は難しく言う。すぐれた作家が男女の体験的考察を経て深い人間洞察に至るように、われわれのゴヤも、アルバ公爵夫人との恋愛によって、「近代に」向かう人間の諸個性を深い所で捉え始めるのである。ゴヤは公爵夫人との楽しい日々を絵日記「サンルーカル画帳」として遺している。 戻る 次へ |