Vol.101 洋書連合構想の具体化について

 

石油と本は違う

先日長崎の知人に招かれて、話題になっている”軍艦島”を訪ね上陸いたしました。黒いダイヤに群がり、大変な賑わいだったことが実感できました。働いていた人たちの毎月の収入は今の相場でいえば100万円以上だったかもしれないと教えられました。それが数か月の間に無人島になってしまったそうです。石油がエネルギー源として、大型タンカーによる輸送や中東の大増産により一気に世界を変えました。今再び将来のエネルギーのあり方を巡って論争が続きますが、石炭から一気に石油、というような転換は結論としては無理でしょう。
 
日本の出版界も遅ればせながら数年前“電子出版元年”と宣言し、版元は蓄積してきたコンテンツを電子情報で提供する事業を本格化しました。500年以上前にグーテンベルクが活版印刷を開発し出版事業は開花しました。活版印刷が人類の三大発明の一つといわれていることが示すように、この発明が人類の発展にどれだけ多くの貢献をしたかは周知の事実です。科学技術系の情報源としての雑誌などは数年のうちに大半がデジタル情報となって紙媒体を駆逐していくでしょう。しかし私は、紙媒体としての”本”についても、今後も多くの人達が良書の刊行を期待すると考えます。すでに世界の出版界のデータにもその兆候が出始めています。電子書籍は出版点数全体の20%ぐらいが適当かもしれません。本は石炭から石油へのときのような、紙から電子への100%の大変換はあり得ません。私は良い本を提供することを念頭に、再度、本を読む、本を愛する人たちが増えるよう業界人の一人として今後も努力していきます。
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大手出版社の責任

3月末、タイのバンコクで開かれたIPA(国際出版連合)の総会に参加してまいりました。特に最近発展が著しいアジアの関係者と懇談する機会を持ちたかったからです。総会自体はIT時代の著作権のこととか、出版の自由とは?など活発な議論が続きましたが、オープンのセッションで、招かれたアジアの発展国の研究者や図書館人から、欧米の大型版元の代表の方たちへ、何故毎年急速にオンライン型の雑誌類の海外販売価格をアップさせるのか?という質問が相次ぎました。確かにこの10年で主要な、特にSTM分野のオンライン商品の価格が高騰しています。それらは世界中の図書館や研究者にとって不可欠な情報源なので購入せざるをえません。世界の研究技術の進歩こそが、将来的にマーケットを拡大していくであろうことを考慮すると、研究技術を支援することこそが発信者の責務でしょう。これらの値上げが図書館予算を圧迫して、特に人社系の書物類の出版活動を阻害しています。
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洋書連合構想の具体化について

4年近く前、日本の書籍の流通について改善と活性化を求めて、DNP(大日本印刷株式会社)が提唱してスタートした丸善CHIホールディングスに当社も参加しました。その後、グループ内の洋書取扱い3社、丸善・雄松堂・東京ブックランドでこれからの日本市場の中で我々の果たすべき役割について前向きに検討して来ましたが、この春の丸善CHIホールディングスの株主総会とその後の役員会で、具体的に2016年春の統合が決定され準備に入りました。
”お客様にとって有利であること“、新しい構想で、物流・情報・海外戦略でまったく違った個性を持つ3社のエネルギーを集約することによって”海外からも評価の高い企業を作ること“などを目標にいよいよ夢を実現させるべく統合へ向けてこの春から協議を開始しました。多難な作業であることは十分理解しています。関係各位のご理解とご協力を切にお願いいたします。

 

2015年6月
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