Vol.96 雄松堂書店が手掛ける復刻版の企画について

雄松堂書店が手掛ける復刻版の企画について

今年はアメリカと日本が日米和親条約を締結調印してから丁度160年に当たります。
太平洋戦争など、利害の相違から一時的に不幸な時代もありましたが、トータルで考えてみれば、現在の友好的な日米関係の基本はこの時にスタートしたのではないかと思われます。
ペリーは来日に際し、当時の日本政府や要人に、日本人から見れば驚くような、しかも膨大な贈答品を献上しました。その時の様子や贈り物の詳細リストなどは、記録がはっきり残っており、書物の形で出版されています。また当時は写真技術がなかったので、幕府や仙台藩のような大藩は、専門の絵師を久里浜、横浜、浦賀に派遣して詳細なスケッチ画を残しました。それらの絵は、その後多くの関係者により転写され、現在日本各地のペリーに関連する図書館、機関などにも残されています。

ペリー提督と副将アダムズ(『金海奇観』より)

ペリー提督と副将アダムズ(『金海奇観』より)

たとえば幕府(将軍)宛てにどんなものが贈られたのでしょうか。

  • Miniature steam engine 1/4 size with track, tender and car
  • 2 telegraph sets, with batteries, three miles of wire, gutta percha wire, and insulators.
  • Telescope and stand
  • Barrel of whisky

といった品々が揚げられます。その他、ピストル等の武器類など数多くの品物が含まれていました。また、アメリカの当時の印刷技術を駆使した、政府刊行物、地図、議会の議事録などが贈り物の中でも主要なものでした。その中に19世紀末アメリカで出版された当時世界の人を驚かせた、大きな印刷物である”Audubon, Birds of America”が含まれていました。この435枚に及ぶ実物大の鳥類図鑑(手彩色)は1組で100キログラムの世界でも有数の大型本で、受け取った幕府のお役人は大変驚いたと思われます。

献上品のかずかず(『金海奇観』より)

献上品のかずかず(『金海奇観』より)

この図鑑の制作者はアメリカを中心に博物館や図書館、収集家等に10年以上かけて配本しておりました。またアメリカ政府はイギリスなどヨーロッパの主要国に寄贈しているようで、世界中10か国ぐらいに現物が保管されており、各機関の至宝とされています。
当時の日本になぜ寄贈されたのでしょうか。そして今どこに保管されているのでしょうか。
以前から、マスコミや専門家の方々が多くの贈答品とともに探していたのですが、この寄贈されたアメリカの鳥は発見できませんでした。幕末の江戸の火災の際に焼失したというのが定説です。
 
現在、完全な原本はアメリカに約80組、ヨーロッパに約25組、オーストラリアの国立図書館に1組、そして25年ほど前に明星大学がアメリカのオークションで購入しましたので日本に1組の保管が確認されています。
 
雄松堂書店はペリー来日160周年を記念して、ペリー艦隊や贈り物を描いた水彩画の中で、原画ではないかと言われる早稲田大学所蔵の絵巻「金海奇観」を復刻します。また、オーデュボンのアメリカの鳥(明星大学所蔵本)を現代の技術の粋を尽くして復元しようと、大日本印刷がこのために購入した8千万画素カメラによってデジタル化、さらにこの企画のために漉いた特殊紙を使って印刷し、100部限定として復刻します。日本発信の稀少な企画として世界の各方面から期待されております。
原本を保管している、アメリカの諸機関や、40年ほど前にオフセット印刷された復刻版と比較していただき、いかに現在の印刷技術が高度化したのかを多くの皆さんから評価していただきたいと思っております。
 
電子化が出版業界においても急速に加速し、書物の売上の下降線が続いておりますが、雄松堂は後世に残る立派な本を残すことの重要性を認識して、こうした方面で多くの企画に取り組んでおります。
これらの企画について皆さんからのご意見をいただければ幸いです。

原装影印版 黒船来航絵巻 『金海奇観』

原装影印版 黒船来航絵巻 『金海奇観』

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"Audubon, Birds of America"

“Audubon, Birds of America”

 
2014年8月