浜の風が呼んでいる―まつお、図書館総合展2015に行く―

図書館総合展入口えー、毎度説明が長くてすみませんが、この催しは「図書館総合展」といいまして、今年(2015年)で第17回を迎えます。例年11月開催で、今年は11月10日(火)~12日(木)パシフィコ横浜で行われました。おもに図書館(大学図書館・専門図書館・公共図書館など)関係者の方を対象に、図書館運営にかかわる什器、システム、書籍、サービスなどを提供する事業者が一堂に会し、「図書館のことならなんでも」展示されている一大イベントとなっています。近年では図書館や学生グループの出展やポスターセッション(出展料が安くて実は人気なんだとか)も加わり、一段と充実。展示のほかにも図書館・学術情報界の最先端がわかるフォーラムが開催され、年に一度の「図書館のお祭り」と化している様相すらあります。
ブース入口
雄松堂は丸善CHIグループの中の一社として、DNPブース内に出展しました。
扱い商品が実に多彩な雄松堂。今回はちっちゃ~い豆本からエレファントフォリオという畳一畳ほどもあるサイズの『アメリカの鳥』まで展示、さらにオンラインデータベースもご案内、と。

 

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これがその『アメリカの鳥』。アメリカのオーデュボンという人が10年以上の歳月をかけて出版した執念の書。鳥はすべて原寸大で描かれています。ペリーが日本に来航した際、将軍への献上品として携えてきたとのこと。そりゃあ、これだけ大きな本を、しかもこんなに大きく印刷してあるものを見せられた当時の日本人は驚いたでしょうねぇ。「メリケンにはかように大きな鳥がおるのか!」

 

まつおと豆本
そしてこれが豆本。今でも熱心なマニアがいる豆本ですが、これらは主に18~19世紀に作られたもの。小指の先ほどの大きさなのに、ちゃんと本文まで印刷してある……!虫眼鏡がついていたり、中には中世の教会さながらに書見台に鎖でつながれている聖書も。装丁だって普通の本と同じように丁寧な作り。「売約済み」の表示が人気のほどを物語っておりました。

 

まつおと古書
「博士ぇ、この古そ~うな紙は、いったいなんですかぁ?」「いいものに気が付いたねカオリ君。これは……」この先はウェブで!って、ちゃんとご説明しますから。名探偵カオリ君と雄松堂の古本博士がワークショップの一環としてブースツアーを行いました。

グーテンベルク聖書で、これはグーテンベルクの42行聖書。世界初の活版印刷物で、15世紀に制作された揺籃期本(インキュナブラ)といわれるものです。ちゃんとした本の形になっているものは全世界でも48セットしかない(そのうち1セットは日本の慶應義塾大学に所蔵されています)のですが、このようにバラバラになったものが時折市場に出るんですねぇ。これは100年ほど前に、アメリカの古書業者が欠ページの多いものの製本を解いて販売したものだそうです。日本にはこのほかにも揺籃期本が。詳しくは雪嶋宏一編『本邦所在インキュナブラ目録』をどうぞ。

 

金海奇観
黒船来航絵巻『金海奇観』原装影印版。1854年に再来したペリー一行とその舶載物を描いたもの。辞書で有名な大槻一族の一人、仙台藩の儒者大槻磐渓が、学者たちのネットワークを活かし、実際にペリー一行を見た人たちからの情報を得て編んだそうです。だからこんなに緻密なのかぁ。将軍に献上された機関車や(これには日米和親条約起草者の一人で『金海奇観』の題字を揮毫した河田迪斎が乗った)電信機が描かれています。この電信機は今でも郵政博物館に所蔵されている!とのこと。

金海奇観
ちなみに「金海」とは「神奈川の海」という意味。神奈川の人にはぜひご覧いただきたい!

 
 
 
 
 

大日本物産図会
『大日本物産図会』明治10年(1877)第1回内国勧業博覧会に出品された錦絵。「東京名所之内 銀座通煉瓦造鉄道馬車往復図」などの開化風俗を描いたことで知られる三代広重が描いたもので、各地の特産品とその製造工程を描いています。58カ国118図を収録しており、たぶんこれが一番コンプリートセットに近い枚数だと思います。

 

大日本物産図会こんな風に折り帳仕立てになっているので、展示もらくらく。経済史、郷土史はもちろんですが、働く女性の姿も多く、女性史的な観点からみても面白いんじゃないでしょうか。

 
 
 
 
 

ファブリカとエピトメー
『ファブリカ』と『エピトメー』。16世紀、近代解剖学の父といわれるヴェサリウス著。彼がこの書を著すまでは、なんと2世紀の医学者ガレノスの説が幅を利かせていたのだとか。やっぱり、ルネッサ~ンス!『エピトメー』は『ファブリカ』の要約版で、実際に解剖の実習室に持ち込まれていたそうです。また、全身の神経図のうえに血管と内臓の図を切り取って重ねあわせ、位置関係を確認できるなど、教材として使える工夫が。昔よくあったよな、学習雑誌の付録なんかで……なんだかなつかしいですねぇ。そしてこの優雅なポージング、医学書としてだけでなく、美術関係の方も必見です。

 

三田文学
オンラインデータベースは……まず、J-DACね。2016年2月リリース予定の『三田文学』。今でも刊行が続く老舗文芸誌ですが、今回は明治43年の創刊から終戦直前の昭和19年まで、35年分397冊をデジタル化。作品・記事・著者名からの検索はもちろん、広告もメタデータを採録し、広告内容・広告主も検索対象に。作品・記事も広告もジャンル分けがされており、「X年~X年頃の映画関係の広告が見たい」なんていう検索にも対応。う~ん、これはっ!検索するだけでもこのぼくの知的好奇心が震えるっ!

 

J-DAC
他にも『都道府県統計書データベース』『企業史料統合データベース』『通産政策史資料』などシブいDBが。
『都道府県統計書DB』は2017年までに明治から昭和47年までの収録が完了する予定で、今は昭和期が全都道府県分そろったところ。表単位で検索できるし、ジャンルでも引けるので便利~。ブタの飼育頭数までわかっちゃう。統計ってどんな研究にもかかわってくるので、大学さんにはぜひ導入してほしいところ。
『企業史料統合DB』は「営業報告書」「目論見書」「有価証券報告書」を収録。だいたい明治から昭和60年ころまでの資料。これのミソは、企業の名前が変わってもイモヅル式に検索できること。「会社」のできはじめから戦争をはさんで高度成長期まで、数字からドラマが見えるっ!あぁ、頭の中で中島みゆきの「地上の星」が……。
『通産政策史資料』は、『通商産業政策史』など通商産業関係の担当省庁が編んだ通史の本と(ここでは「正史」っていってます)、そのために使用された一次資料、関連資料がまとめて見られる。原本は2012年に経済産業研究所から国立公文書館に移管されたばかりで、ずっと非公開だったので、先生方の注目も高い。ここからどんどん新しい研究が生まれてくるのねぇ。

 

アーカイブ化支援
「アーカイブ化支援」。書庫に眠ってる貴重資料、リーズナブルに公開しませんか?保存(脱酸、修復など)、デジタル化、公開、原本の展示まで、いちいち伝手をたどって業者探し……なんてもうしない!これからはワンストップです。もちろん部分的なサポートもOK。資料によってはお客様負担なしのアーカイブ化も可能。何で困っているのかすらわからない、もうどうしていいのやら……。そんなあなたがお客様。まずはお電話ください!実際この「貴重資料のデジタル化」のサイネージに足を止めるお客様が数多くいらっしゃいました。

 

ワークショップ
J-DACはワークショップも実施しました。題して「文芸雑誌広告から繙く戦前期日本企業の姿」。2016年2月に丸善・雄松堂統合記念商品としてリリースの『三田文学』。もともと慶應義塾と丸善はゆかりが深く、福沢諭吉のバックアップで早矢仕有的は丸善を創業したのだとか。丸善が社員の福利厚生の一環として行っていた「死亡請合規則」が日本における保険の元祖ともいわれています。さてそこで『三田文学』。『三田文学』中興の祖ともいえる人物に、同誌にずっと「貝殻追放」を連載し(これは岩波文庫になっています)編集長もつとめた水上滝太郎という人物がいます。実は明治生命創業家の跡取り、阿部章蔵その人のこと。今でいうと辻井喬こと西武の堤清二のように、二足の草鞋を履いていたんですねぇ。さて、そこで今回は『三田文学』に掲載された明治生命の広告から『企業史料統合データベース』で当該時期の営業報告書を探し出し、そこに出ている新契約数と金額をチェック。今度は『都道府県統計書データベース』の当該時期の保険全体の新契約数と金額を探して比較してみます。するってぇと……ふ~ん、やっぱり明治生命ってセレブの保険だったのねぇ。『三田文学』ってある程度余裕のあるひと向けの広告が多いけど、やっぱりそうなんだわ。面白~い。これ、統計を使った研究の実例としていい教材だから、出前授業しますよ。ぜひ、ご一報ください!

 

まつおのブレイク
ふぅ、ちょっと一息。となりにあるのはぁ……醤油とお菓子?!ちょっとまった、まだ生姜焼きになるのは早いって!一瞬あせりましたが、これはDNPブースで行われたワークショップの一つ、「教材開発支援~菓子栞とデジタル地図の融合~」の時の展示品なのでした。びっくりしたなぁ、もう。

 

シーボルト
とこうしているうちに、ワークショップ「雄松堂が紹介する世界の稀覯書 シーボルト「日本」初版図版巻」が。講師は当社の古書部長です。シーボルト『日本』は、長崎出島のオランダ商館の医師として1823年に着任したシーボルトが、1828年に帰国するまでの間の見聞をもとに、彼の日本研究を集大成したものです。日本の地理、風俗、歴史、言語、動植物について、多くの図版や地図で紹介していて、西洋におけるジャパノロジーの基礎となりました。ペリーが日本に来るとき、この本を参考にしたとか。日本地図の国外持ち出しを企てたことがきっかけで、いわゆるシーボルト事件が起こり、シーボルト自身の国外退去につながったわけですが、彼の情熱は無駄にはならなかったんですねぇ。刊行には20年以上の歳月を要したといわれていて、刊行時ですら完全なセットをそろえるのは難しかったそうです。そして、現存するセットの間でも、装幀はもちろん、判型、冊数、図版の数や図柄、彩色の有無など、一つとして同じものがないんだとか!どれもオリジナルってわけね。そしてお値段の方も何と8ケタ!この日は特別にお客様にページをめくってご覧いただきました。シーボルト『日本』の日本語訳はこちら

 

フォーラム_5560-1
2日目には丸善・雄松堂統合記念フォーラム「大学図書館の現実的な未来像 東京大学新図書館構想などをめぐって」が行われました。この盛況を見よ。東京大学の新図書館構想についてのお話で、本を購入・保管し、貸し出すことが中心だったこれまでと異なり、今痛切に変革を求められている大学図書館にとって、あの「東大」がどんな方向に舵を切ろうとしているのかは重大な関心事なのですねぇ。公共図書館の方と思われるこちらからも、こんなお声をいただきました。

 

マンゴープリンさて、戦い?すんで日が暮れて。出展者の方も来場者の方も、蛍の光に送られて、三々五々横浜の宵闇に消えていくのでした……。で、もちろんここでブタの本領発揮!横浜といえば中華ですよ。激辛担々麺に身もだえしつつ、ちょっとお高めのマンゴープリンに癒されました。さぁ、明日から商売商売!

 
 
 
 
 
 
 

禁帯出
と言ってるうちに、キハラさんのブースで買った「禁帯出」マグネットを目ざとい女子にさっそく巻き上げられ、(もともと女子ウケを狙ってたくせに)ちょっとへこむまつおでした。

 

出展を終えて

いやぁ~、年々規模が拡大しているこのイベント。実際に一番触れてもらいたい図書館の方や、このところ増えている学生の来場者の方、つまり利用者の方に直接アピールし、またご意見を伺うことができました。他のブースもとても参考になったし。今、本当に図書館は、「本のあるところ」というだけにとどまらず、多様な資料を収蔵し、研究者や市民にサービスを提供する場になっているんですね。エンドユーザーである研究者、市民の方、また図書館の方にとって本当に必要な資料、サービスとは何か。常に鼻を利かせて、これからも精進してまいりまっす!